非自己 iPS細胞由来パーキンソン病薬 年度内承認に期待 木村徹住友ファーマ社長

木村氏

 住友ファーマ6日、東京都内で社長会見・記者懇談会を開催し、木村徹代表取締役社長が5日に日本国内で製造販売承認申請を行った非自己 iPS細胞由来パーキンソン病薬(国際一般名:ラグネプロセル)について言及。「先駆け審査指定を受けているので、当局も我々の申請内容をレビューしている」と報告し、「年度内承認」に期待を寄せた。
 さらに、医薬品に対し“5段階的に250%まで上げる”とされている米国のトランプ・関税についても、「サプライチェーンを複数有する体制が出来ているので定量的な話をするのは難しい」とした上で「状況を見極めつつ検討を進めていく」考えを示した。
 木村氏は、非自己 iPS細胞由来パーキンソン病薬「ラグネプロセル」について、「京都大学を中心に進めてきた。我々としても10年来のプロジェクトで、その間コロナ禍もありようやく申請にこぎ着けた」 と振り返った。その上で、「一つのマイルストーンを達成できたが、まだ承認されたわけではないので、しっかりと患者さんに届けられるように進めていきたい」と力を込めた。
 加えて、「先駆け審査指定を受けているので、当局も我々の申請内容をレビューしておりスムーズに進むことを願っている」と述べ、「年度内承認に目処が立った」と強調。「ラグネプロセルは、iPS細胞の製品としては世界初になる可能性が高いので、うまく行かねばこの領域そのものの可能性が頓挫する。その点も含めた対応をお願いしたい」と期待を寄せた。また、「今回は、条件期限付き承認になるが、条件期限付き承認から本承認に至ったケースはまだ無い」と指摘し、「本承認を目指してどのような臨床試験を組むのか、最終的なプライマリポイントを含めてこれからの焦点になる」と説明した。
 薬価については、「有効性と製造開発のコストを踏まえて決めて頂けるように働きかけたい」との考えを示した。
 ラグネプロセルは、カリフォルニア⼤学サンディエゴ校による医師主導治験において、本年6月に1例目の投与が行われた。「医薬品の市場規模は、日本と米国で10倍程度違う。従って、米国市場でしっかりと事業を立ち上げなければ、大きな収益は見込めず、投資回収もできない」と断言。その上で、「日本の良い制度(先駆け審査指定制度)の下で早く実用化して、米国でも同時に進めていく」戦略を明かした。
 木村氏は、製造体制にも言及し、「江坂の工場(大阪府吹田市)では、何種類かの自動バイオ装置を使った生産を組み上げている」と説明し、「ある規模の生産体制を効率的に構築すれば、グローバルな需要にも対応できる」と語った。
 トランプ・関税では、「医薬品は、米国も含めて、中国、インド、欧州など、様々な段階で色々な材料ごとに国が分かれている。しかも、安定供給のために一つの製品を作るサプライチェーンを複数持つ体制が構築されている」と述べ、「サプライチェーンをシフトすることで関税の割合も変わってくる。250%の話が出る前の分析においては、今年度の業績にはほぼ影響が出なかった」と明かした。
 国内営業では、本年5月、ノボノルディスクファーマと2型糖尿病治療注射薬「オゼンピック」の国内コ・プロモーション契約を締結し、7月より共同で医療機関への情報提供活動を開始した。
 木村氏は、「糖尿病薬は当社の主力製品の一つで、経口剤のツイミーグ、注射剤のメトグルコとオゼンピックによる営業活動のシナジー効果に期待したい」と明言。さらに、「注射剤は、以前にトルリシティ(リリー)を扱っていたときに我々が切り開いた市場なので、MRの経験値にアドバンスがある」と述べた。
 

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