フィネレノン 米FDAが左室駆出率40%以上心不全患者への新適応承認 バイエル

 バイエルは23日、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)「フィネレノン」について、米国FDAが左室駆出率(LVEF)40%以上の成人HF患者の治療薬として承認したと発表した。
 フィネレノンの新しい適応は、LVEF40%以上の成人HF患者における心血管死、HFによる入院または緊急受診のリスク減少。現在、LVEF 40%以上の HF治療薬として米国以外では承認されていない。中国、EU、日本においてLVEF 40%以上の心不全治療薬として承認申請しており、現在審査中である。
 米国では、LVEF40%以上のHFが約370万人にを数え、年間50万人以上が入院している。多くは糖尿病、高血圧、肥満、CKD などの複数の併存疾患を抱えており、入院率が高いため死亡リスクが高まり、医療制度に大きな負担をかけている。LVEF40%以上のHF患者のうち、25%が退院後1年以内にHFのために再入院し、5年死亡率は75%となっている。
 こうした中、FDAは、LVEF 40%以上の成人HF患者を対象としたフィネレノンの適応追加申請について、本年3月に優先審査品目に指定した。FDAによるフィネレノンの今回の承認は、2024年欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表されたP3試験(FINEARTS-HF試験)データに基くもの。
 FINEARTS-HF試験においてフィネレノンは、主要複合評価項目である心血管死およびすべて(初発および再発)のHFイベント(HFによる入院または緊急受診)に関し、統計学的に有意で、臨床的に意味のある減少を示した。これらのベネフィットは、基礎治療、併存疾患、入院状況にかかわらず示された。
 現在進行中のMOONRAKERプログラムは1万5000人以上を対象とするHFにおいてこれまでで最大規模のP3試験プログラムで、幅広い患者層と臨床背景におけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目的としている。FINEARTS-HF試験はMOONRAKERプログラムの一つである。
 今回のFDAの承認によりフィネレノンは、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)、およびLVEF 40%以上のHFを適応として米国で承認された唯一の非ステロイド型MRAとなる。

◆スコット・D・ソロモン氏(ハーバード大学医学部教授、マス・ジェネラル・ブリガム臨床試験アウトカムセンター長、FINEARTS-HF試験運営委員会委員長)のコメント
 FDAによるフィネレノンの承認は、予後不良であり、患者数が増加傾向にあるLVEF40%以上のHF患者に対する治療の選択肢を広げる。FINEARTS-HF 試験で示された有効性に基づき、フィネレノンは包括的なケアの新たな柱となり、臨床転帰を改善することで、依然として高いアンメットメディカルニーズを抱える米国の患者さんに新たな希望をもたらす。

◆クリスティーン・ロス ドイツ・バイエル社エグゼクティブバイスプレジデント グローバル製品戦略&コマ―シャリゼーション責任者のコメント
 LVEF40%以上のHFに対してフィネレノンが承認されたことは、この疾患を持つ患者さんの生活を改善するという当社のコミットメントにおいて、重要なマイルストーンである。
 高血圧や心房細動など複数の合併症を併せ持つことが多い中、こうした複雑な患者さんに対してエビデンスのある治療選択肢が限られていることに医師は直面していた。
 フィネレノンはFINEARTS-HF試験において、LVEF 40%以上の HF 患者の心血管イベントの発現を抑制した。われわれは、患者さんの非常に大きなニーズの解決に貢献できる基礎治療薬としてのフィネレノンの可能性に期待している。

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