住友ファーマは13日、米国子会社である 開発中の抗がん剤「ヌビセルチブ」(開発コード:TP-3654)について、米国FDAより中等度または高リスクの骨髄線維症を対象とした「ファストトラック指定を受領したと発表した。 同剤は、同社子会社のSMPA社が開発しているもの。
ヌビセルチブは、選択的経口PIM1キナーゼ阻害剤で、2025年欧州血液学会(EHA)において、最新のP1/2 試験の予備的なデータが発表されており、症状の反応と相関するサイトカインおよび脾臓容積の改善を含む臨床効果が示唆された。
FDAの「ファストトラック指定」は、重篤または生命を脅かす恐れのある疾患に対する治療法のうち、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される治療法に付与される。
同指定により、FDAとの協議をより頻繁に行うことや申請資料を段階的に FDA に提出することが可能となり、FDAは全データの提出を待たずに提出されたデータから順次審査を進めることができる。さらに、今後得られる臨床試験結果によって、優先審査の対象となることも期待される。
骨髄線維症は、重篤かつ希少な血液悪性腫瘍であり、JAKシグナル伝達経路の異常によって骨髄に線維組織が蓄積することを特徴とする。骨髄線維症の臨床症状には、脾臓の腫大(脾腫)、著しい全身症状、およびヘモグロビンや血小板の減少などが含まれ、世界で50万人に1人が罹患するとされている。
骨髄線維症に対しては、持続的かつ高い奏効率を示し、血液毒性の少ない、併用療法を含む新たな治療選択肢の開発が強く求められている。
再発または難治性の骨髄線維症患者を対象とした ヌビセルチブのP1/2試験の最新データは、2025年6 月12日に開催された EHAで発表された。
予備的なデータによると、ヌビセルチブの単剤療法は良好な忍容性を示し、用量制限毒性(DLT)は認められなった。評価可能な患者において、脾臓容積減少(SVR25 22.2%)、全身症状軽減(TSS50 44.4%)、骨髄線維化の改善(42.9%)、ヘモグロビン値の改善(24%)、血小板数の改善(26.7%)を含む臨床活性が認められた。
また、ヌビセルチブの治療により、炎症性サイトカイン(EN-RAGE、MIP-1β 等)の減少および抗炎症性サイトカイン(アディポネクチン等)の増加を含むサイトカインの著しい変化が認められ、これらの変化と症状の改善および脾臓容積の改善に有意な相関(p<0.001)が示された。
非臨床試験データおよび現在進行中の治験データより、ヌビセルチブ単剤療法のみならず JAK 阻害剤との併用療法が骨髄線維症の患者に対して有望な選択肢となる可能性が示唆されている。