Johnson & Johnson(J&J)は26日、トアルクエタマブについて、再発・難治性多発性骨髄腫のP1/2試験(MonumenTAL-1試験)における日本人コホートの試験結果で深く持続的な奏効を示したと発表した。
同試験の日本人コホートは、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも3つの標準的な治療歴を有する再発又または難治性の多発性骨髄腫を対象としたもの。
トアルクエタマブによる治療の結果、追跡期間中央値13.4カ月の時点で、全奏効率(Overall Response Rate : ORR)は77.8%であった。これらの結果は、2025年5月23日から25日まで群馬県高崎市で開催された第50回日本骨髄腫学会(JSM)で発表された。
多発性骨髄腫は、依然として治癒困難な血液がんで、再発を繰り返してその度に別の治療を行わなければならなくなる症例が多い。再発して症状の再燃を繰り返す度に症状は悪化し、治療が奏効する可能性は低くなり、奏効持続期間も短くなる傾向にある。
日本国内における2020年の多発性骨髄腫の新規診断者数は約7300人で、2023年の死亡者数は約4300人とされている。
P1/2MonumenTAL-1試験のP2相日本人コホート(n=36)では、国内P1相MMY1003試験において忍容性が確認されたトアルクエタマブのP2相推奨用量(RP2D)について、日本人患者さんにおける有効性及び安全性を、ORRを主要評価項目として評価した。解析の結果、日本人患者において、トアルクエタマブの深く持続的な奏効が認められた。
トアルクエタマブは、T細胞表面に発現するCD3受容体と、多発性骨髄腫細胞表面に高発現するGタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD(GPRC5D)に結合する二重特異性抗体である。J&Jは、トアルクエタマブに関し、治療選択肢が限られた治癒困難な多発性骨髄腫の治療薬として、国際共同P1/2相MonumenTAL-1試験及び国内P1相MMY1003試験の結果に基づき、2024年11月20日に日本国内での製造販売承認申請を行っている。これらの試験では、再発または難治性の多発性骨髄腫患者さんにおけるトアルクエタマブの有効性及び安全性を評価している。
P2相MonumenTAL-1試験の日本人コホートでは、追跡期間中央値13.4か月におけるORRは77.8%で、最良部分奏効(Very Good Partial Response:VGPR)以上が72.2%、完全奏効(Complete Response:CR)以上が55.6%、厳格な完全奏効(Stringent Complete Response:sCR)は47.2%であった。
12か月時点の奏効持続期間(Duration of Response:DOR)率、無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)、全生存期間(Overall Survival:OS)率はそれぞれ66.4%、56.3%、74.1%であった。初回奏効までの期間中央値は1.2か月であった。
なお安全性に関する所見は、MonumenTAL-1試験の海外データと一貫しており、安全性に関する新たなシグナルは認められなかった。グレード3/4の有害事象としては血液毒性が最も一般的に認められ、主なものは、リンパ球減少症(全グレード、47.2%;グレード3または4、47.2%)、好中球減少症(全グレード、38.9%;グレード3または4、27.8%)、貧血(全グレード、27.8%;グレード3または4、22.2%)であった。
サイトカイン放出症候群(CRS)が75.0%で認められたが、いずれの症例もグレード1(58.3%)またはグレード2(16.7%)であり、治療の中止をせずに全て回復した。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は認めらなかった。感染症は52.8%の患者で認められ、グレード3または4の感染症の発現率は16.7%であった。
GPRC5D関連有害事象として、味覚関連、発疹以外の皮膚障害、爪関連、皮疹関連有害事象がそれぞれ80.6%、66.7%、55.6%、36.1%で認められたが、ほとんどがグレード1または2で、治療の中止例はなかった。
Yusri Elsayed j&j Innovative Medicine Global Therapeutic Area Oncology Head(M.D., M.H.Sc., Ph.D.)のコメント
P1/2相MonumenTAL-1試験の日本人コホートでは、再発又は難治性の多発性骨髄腫患者において、トアルクエタマブは、深く持続的な奏効を示した。これらの結果は、さまざまなアプローチによるポートフォリオを通じ、治療選択肢の限られた多発性骨髄腫とともに生きるすべての患者さんのアウトカムに変革をもたらすことに重点を置く私たちの姿勢を強調するものである。この新しい治療薬をいち早く日本の患者さんにもお届けできるよう尽力していく。