
参天製薬は21日、Webによる2025-2029年度中期経営計画説明会を開催し、伊藤毅社長兼CEOが眼科市場を取り巻くグルーバル環境について言及。「大手メガファーマが眼科製品を創製するケースが増えている」とした上で、「それは数1000億円以上の売上高が期待できるメジャーな上膜疾患疾患などにフォーカスしているケースが多い。巨大な売上規模が見込めない領域については必ずしも積極的ではない」と分析した。
さらに、「大手ファーマは着目しないが、参天製薬だからこそ患者さんに価値貢献し、かつ製品価値を最大化し得る疾患が多く存在している」と強調し、「大手企業は競合にもなるが、自販で十分な成果が出せない地域においては、販売提携などのパートナーになり得る」との考えを示した。
参天製薬は、2023年度に発表した前中期経営計画(~2025年度)において構造改革などの施策を着実に遂行し、2025年度の数値目標を前倒しで達成した。2024年度の通期業績は、売上収益3000億400万円(対前期比0.6%減)、営業利益468億8000万円(21.6%増)、当期利益362億5600万円(36.1%増)。
今回、同社は、長期視点での戦略の展開と収益基盤のさらなる強化を通じた新たな成長軌道への転換を実現すべく、2035年までに目指す姿、及び2029年度までの中期経営計画(2025~2029年度)を策定した。2035年まで目指す姿として、「“Santen Commercial Excellence” を軸に世界の患者と眼科コミュニティから信望を集める眼科のリーディングカンパニー」を掲げている。
また、2025~29年度中期経営計画の最終年度は、売上収益4000億円(24年度実績3000億円)、コア営業利益800億円(同594億円)、ROE14%以上を数値目標としている。
短中期売上成長においては、海外地域 (EMEA・アジア・中国)におけるリーダーポジションを確立。日本を含む全地域で市場成長率を上回る収益拡大により、プレゼンスを強化する。日本事業のリーダーポジションを堅持しながら、海外事業の力強い成長により、2029年度の海外事業売上比率は58%を目指す。
その具体策として、新領域となる近視・眼瞼下垂におけるRx市場を創出し、医師や医療機関が積極的に治療提供する環境を地域に即して整備する。近視は、「近視進行抑制点眼治療市場」の確立により、小児の近視患者に対して、近視の進行自体を抑制し、近視による日常生活への負担や将来の目の不安を軽減する。 眼瞼下垂は、点眼薬で治療できる疾患として認知向上と新たな治療概念の普及を促進し、非侵襲的な「眼瞼下垂点眼治療市場」の確立を追求する。
中長期売上成長では、Rxポートフォリオ・パイプラインを強化する。そのために、同中期経営計画期間中の売上へ寄与する現行パイプラインの承認取得早期化やLCM(ライフサイクルマネジメント)を継続推進。加えて、2030年度以降の持続的な成長につながるRxポートフォリオ・パイプラインの拡充に向け、事業開発のターゲット選定と機能・プロセスを強化すると共に、新たな点眼薬製剤技術の開発や新規モダリティにも挑戦する。
事業基盤の継続強化では、安定供給・サプライチェーンの整備にスポットを当てる。安定供給では、新製品の需要増加を見越し、自社生産キャパシティ拡大と生産ネットワーク見直しにより、安定かつ柔軟な供給体制を強化する。
コストの持続的適正化では、多角的な原価最適化施策の推進、及び業務プロセス改革によるSG&Aの最適化を徹底する。
人材・組織とデジタル・ITの強化は、基本理念やビジョンを体現し成長に寄与する人材を最重要のアセットと位置付け、能力向上と人材を活かせる生産性の高い組織づくりを推進する。中長期での持続的な成長を見据え、デジタルの効果的活用、また全社のIT・セキュリティ基盤の強化により、事業の生産性と安定性を向上させる。
会見で伊藤氏は、「眼科市場の特性と参天製薬の強みを結びつけた独自のビジネスモデルにより、着実な成長を短期・中長期で実現できる」と自負した。