
住友ファーマの木村徹社長は13日、2024年度決算説明会で会見し、「北米の基幹製品であるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)が業績に大きく貢献する事業に育ってきた」と高く評価した(24年度の3製品売上高合計は1617億円)。その上で、「27年度には2500億円規模まで拡大し、より収益基盤を安定化する」考えを強調した。
さらに、「他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞(パーキンソン病)の2025年度の承認申請および期限付き承認取得や、ヌビセルチブ(骨髄線維症)の27年度上市、エンゾメニブ(急性骨髄性白血病)の27年度申請を目指す」と明言。
「Reboot2027-⼒強い住友ファーマへの再始動」として、再⽣・細胞およびがんの事業化によって“価値創造サイクル”の再構築を推進し、「CNS製品開発を再始動して基幹3製品特許切れ後の収益基盤を構築する」戦略を示した。
配当は、「できるだけ早く復活したい」とした上で、「株主にとって配当の復活も借入金の減少も重要であると思う。そのバランスを見ながら考えていきたい」と語った。
27年度以降については、コア営業利益は一時的要因を除き安定的に250億円以上を計上する。フリーキャッシュフローは、25年度から27年度にかけて黒字を維持し、27年度は売却関連収益抜きで黒字とする。有利子負債は、追加施策も実施して可能な限り早期に2000億円以下に削減する。
住友ファーマの2024年度業績(コアベース)は、売上収益3988億円(対前年比26.8%増)、コア営業利益432億円(前期は1330億円の赤字)、営業利益288億円(3549億円の赤字)、親会社の所有者に帰属する当期利益236億円(3150億円の赤字)となった。研究開発費は485億円(前期909億円)。
販売面では、基幹3製品の伸⻑等により売上収益が増加した。基幹製品の売上高はオルゴビクス831億円(対前年比96.9%増)、マイフェンブリー128億円(39.0%増)、ジェムテサ658億円(78.6%増)。
利益面では、事業構造改善効果の発現に加え、研究開発投資の選択と集中による削減等のグループをあげた合理化により、販売費及び⼀般管理費ならびに研究開発費が⼤きく減少。コア営業損益が⼤幅に改善し、3期ぶりに最終黒字化転換した。
臨床開発のトピックスでは、京都大学病院の医師主導試験結果において他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞移植後の18F-DOPAPETで移植細胞の⽣着とドパミン産⽣の増加が確認され、4月17日に公表された。同社では、本年3月からPMDAと先駆け総合評価の相談を開始しており、2025年度国内承認申請および期限付き承認取得を目指している。
2025年度業績予想(コアベース)は、売上収益3550億円(対前年比11%減)、コア営業利益560億円(29.8%増)、営業利益540億円(87.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益400億円(69.2%増)。
売上収益は、エクア・エクメット(糖尿病薬)の独占販売期間終了などにより国内で141億円減少。北⽶はドルベースでは増収となるが、為替影響が⼤きく36億円の減収となる。アジアは、丸紅グローバルファーマへの事業譲渡の影響(2025年7⽉末の合弁化を想定)により261億円減少する。
中国事業譲渡については、「より重視すべきは米国、日本の新薬事業である」と断言。その上で、「思い切って中国事業を他社にお任せする決断をした。そこで得られた資金は、成長分野への戦略投資につなげたい」と語った。
販管費は、⽇本の事業構造改善効果およびアジア事業譲渡により減少。アジア事業の譲渡による収益(譲渡益約450億円)を見込んでおり増益となる。
木村氏は、従来の中期経営計画2027を正式に通り下げ、今後進むべき方向性を示す「Reboot2027(再始動)」について説明した。
Reboot2027では「抜本的構造改⾰の継続と並⾏して、研究開発型ファーマとしての基盤再建に取り組む⾃社イノベーション基軸の価値創造サイクルを再構築することで復活への道筋をつける」と力説。
また、基幹3製品の拡大、他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の上市、ヌビセルチブの上市、エンゾメニブの申請など再構築に向けた重要マイルストンが今後3年間に集中する中でも「iPS事業やがん事業、アジアの事業譲渡も含めた今後の方向性が示される2025年度が肝になる」と位置づけた。加えて、「がん事業を優先し、強力な開発パートナーと価値の最大化を目指す」戦略も明かした。
こでまでのスピーディな業績回復の経験をReboot2027にどう活かすかでは、「我々の日々の活動の中に削減できる余地があった。日米で2200人削減し、今無理してスリムになったが、それを復活するに当たっては一つ一つ精査しながら贅肉が付かないようにしたい」と強調。さらに、「歯を食いしばって頑張ったら1年でこれだけ変わるという経験は今後の大きな糧になる」と述べた。
木村氏は、トランプ関税にも言及し、「25%の輸入関税が掛けられたが、当社の影響は15億円程度でそれ程大きくない」と分析。薬価の最大90%引き下げについても「日米において我々は直接医療機関に薬を売っているわけではないので、価格のコントロールはできない」とした上で、「誰にどういう形で行うのか注視していきたい」と述べた。