素材添加タイミングのコラーゲン線維形成への影響確認 ロート製薬

肌が自らハリを生み出す力の強化や新たな剤形開発に寄与

コラーゲン線維形成プロセス

 ロート製薬は23日、素材の添加タイミングがコラーゲン線維の形成に影響を与えることを明らかにしたと発表した。
 線維芽細胞のコラーゲン線維形成プロセスに合わせて、素材を適切なタイミングで添加することで、細胞本来の力を引き出し、コラーゲン線維の生成量を大幅に向上させることを確認したもの。これにより、肌が自らハリを生み出す力の強化が期待され、新たな剤形の開発につながる可能性がある。同研究成果は、日本薬学会第 145 年会(2025 年 3 月 28 日付)で報告された。
 ロート製薬では、健やかで美しい肌を支えるコラーゲンの研究に力を入れている。コラーゲンペプチドやビタミンCは、広く美容内服製品に使用されている。また、これらの素材がヒト真皮線維芽細胞でのコラーゲン産生に影響を与えることは知られている。だが、素材の組み合わせや摂取タイミングに関する知見は十分に明らかになっていない。
 一方、加齢や紫外線などにより、肌のコラーゲン線維量は年齢とともに減少し、線維芽細胞の活性も20代から低下すると言われている。こうした背景から、コラーゲンペプチドやビタミンC、ミネラルといった成分が美容目的で活用されてきたが、これらの成分が線維芽細胞にどのように届いて、コラーゲン産生能および線維形成能を高めるかについては、最適な組み合わせや効果的な活用法を含めて、いまだ十分な知見が蓄積されていない。
 そこで、同研究では、コラーゲンを増やすだけでなく、肌の土台となる「コラーゲン線維」としてしっかりと組み上げることにも目を向けた。線維芽細胞の「コラーゲン線維形成プロセス」に着目し、肌のハリに直接寄与するコラーゲン線維を効果的に形成するために、適切な素材の組み合わせおよびそれらの添加タイミングについて検討した。
 今回、アミノ酸・ペプチド(CompA)と、ビタミン C、ミネラルなどを含む成分(CompB)を設計した。
 これらを線維芽細胞に対して同時あるいは時間差(前後添加:CompA を添加して2時間後に CompB を添加)に分けて添加する影響を、プロコラーゲン産生量およびコラーゲン線維量の2つの指標で比較評価した。
 まず、線維芽細胞における CompA、ビタミン C、CompB、AB 同時添加、AB 前後添加によるコラーゲン産生能を、培養上清中のプロコラーゲン量を指標に比較した。
 その結果、ビタミンC 単独と比較して、ビタミンCとミネラルなどを含むCompBはプロコラーゲンの産生を有意に促進した。さらに、CompA と CompB を同時に添加した条件(AB 同時添加)では最も高いプロコラーゲン産生量が確認された(図 1)。

 次に、プロコラーゲン産生能に加え、肌のハリに直接的に関与するコラーゲン線維量についても、免疫蛍光染色法を用いて評価した(図 2)。

 その結果、CompBはビタミンCと比較してより多くのコラーゲン線維が形成され、ミネラル成分が線維形成促進に寄与することが示された。CompA単独では線維形成はほとんど認められなかったが、CompB との前後添加により、線維形成が大きく促進される相乗効果が確認された。
 一方、同時添加した場合は、1の結果よりプロコラーゲンの産生は確認されたものの、成熟した線維構造の形成効果は低い傾向が見られた。
 これらの結果から、成分を単に細胞に添加するだけではなく、そのタイミングが線維形成に重要であることが示唆された。プロコラーゲン産生については、CompA と CompB を同時に添加した条件で最も高い効果が得られた。
 これに対して、コラーゲン線維形成では、CompA とCompBを時間差で添加(前後添加)した条件で最大の効果が認められた。
 CompA に含まれるアミノ酸やペプチドは、プロコラーゲン合成に必要な材料を供給し、CompB に含まれるビタミンCやミネラルは、線維形成に関与する酵素の働きをサポートしていると推察される。
 すなわち、前後添加によって細胞が段階的にプロコラーゲンを合成・分泌し、効果的に線維へと組み立てられるプロセスを経たのではないかと考えられる。これは、生体内でのコラーゲン線維形成のプロセスを模倣することで、細胞本来の機能を最大限に引き出せる可能性を示唆している。
 同研究により、成分の作用タイミングを考慮することで、コラーゲン線維形成効果を高める可能性が示唆された。特に、単にコラーゲン産生量を増やすのではなく、肌の構造を実際に支える「コラーゲン線維」をいかに効果的に形成できるかという点は肌の健康に対する新たなアプローチに繋がる可能性が考えられる。 同社では、今後もより高い機能性を持つ製品開発に向けた研究を進めていく。

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