肺動脈性肺高血圧症治療薬「WINREVAIR」 P3試験で全死亡、肺移植、入院リスクを有意に低下 MSD

 MSDは15日、肺動脈性肺高血圧症治療薬「WINREVAIR」(ソタテルセプト)について、P3相ZENITH試験において複合エンドポイント(全死亡、肺移植、肺動脈性肺高血圧症[PAH]による入院)のリスクをプラセボと比較して76%低下したと発表した。
 ZENITH試験は、最大耐量のPAHバックグラウンド治療を受けている死亡リスクの高いWHO機能分類(FC)IIIまたはIVの肺動脈性肺高血圧症(PAH Group 1 PH)の成人患者を対象に、WINREVAIRをプラセボと比較評価するP3相試験である。
 中央値10.6カ月のフォローアップ期間(範囲:0.3〜26.1カ月)において、WINREVAIRは重要な疾患状態の悪化/死亡イベント(全死亡、肺移植、およびPAH悪化に関連する24時間以上の入院の複合イベント)の相対リスクをプラセボと比較して76%低下させた(HR=0.24 [95% CI, 0.13-0.43]; p<0.0001[片側])。
 一つ以上の重要な疾患状態の悪化/死亡イベントが認められた患者は、WINREVAIR群では17.4%(n=15/86)、プラセボ群では54.7%(n=47/86)であった。ZENITH試験におけるWINREVAIRの安全性プロファイルはこれまでの試験で確認された結果と概ね一貫していた。
 同結果は3月31日、ACC.25米国心臓学会学術集会のLate Breaking演題として口頭発表され、同時にThe New England Journal of Medicine誌にも掲載された。
 なお、MSDは2024年11月に、独立データモニタリング委員会の勧告により、ZENITH試験で非常に優れた有効性が認められたことから同試験を早期終了し、全登録患者に対し、非盲検継続投与試験のSOTERIA試験を通してWINREVAIRの投与を受ける機会を提供することを明らかにしたが、今回の発表はこれに続くもの。
 同試験は、主要評価項目において非常に優れた有効性が認められたことから早期終了となったが、主な副次評価項目である全生存期間は、中間解析での統計的有意性を確立するための条件として厳しく設定した有意水準(p<0.0021)に到達しなかった(HR=0.42 [95% CI, 0.17-1.07]; p=0.0313])。
 その他の副次評価項目はWINREVAIR群で数値的に改善が認められたが、事前に規定された階層的検定手順に従い、正式な検定は実施されていない。
 ZENITH試験は、PAHの成人患者においてWINREVAIRの有効性が示された2つ目のP3試験で、一つ目の試験はACC.23で発表されたP3相STELLAR試験である。ZENITH試験の結果は世界中の規制当局に共有していく。なお、WINREVAIRは現在、STELLAR試験の結果に基づき40カ国以上で承認されている。 

◆マーク・アンベール氏(University Paris-SaclayおよびInserm Unit 999 Hospital Bicêtre Department of Respiratory and Intensive Care Medicine)のコメント
 ZENITH試験は、主要エンドポイントとして、重要なアウトカム指標(全死亡、肺移植、またはPAHによる入院)のみを評価項目に含めた初のPAH臨床試験である。
 WINREVAIRがこれらの複合的な評価項目に対し有意で臨床的に意義のある影響を及ぼすことが示された今回のデータは、臨床開発プログラムで蓄積されるエビデンスと合わせ、WINREVAIRが幅広いPAH患者さんの診療を変革する可能性を示唆するものである。

◆エリアブ・バールMSD研究開発本部シニアバイスプレジデントでグローバル臨床開発責任者、チーフメディカルオフィサーのコメント
 ZENITH試験では、WINREVAIRを投与した患者さんにおいて、全死亡、肺移植およびPAHの入院の複合エンドポイントのリスクがプラセボと比較して76パーセント低下し、優れた結果が得られた。改善は治療の早い段階から認められ、試験期間全体でベネフィットが拡大した。ZENITH試験は、非常に優れた有効性が認められたことから早期終了した初のPAH臨床試験であり、PAHコミュニティーに希望をもたらす臨床研究の重要な節目となる。

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