アストラゼネカは7日、イミフィンジについて、筋層浸潤性膀胱がん患者さんに対する最初で唯一の周術期における免疫療法として、米国で承認を取得したと発表した。
対象は、成人の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に対する根治的膀胱全摘除術(膀胱を摘出する手術)前のゲムシタビンおよびシスプラチンとの併用による術前補助療法、および術後補助療法における単剤療法。
同承認は、FDAの優先審査指定を受けたもので、P3相NIAGARA試験の結果基づいている。2024年には、米国で2万人以上がMIBCの治療を受けた。膀胱がんは、腫瘍が膀胱の筋層に浸潤し、遠隔転移を伴わない場合に筋層浸潤性とみなされる。MIBCの治療は根治を目的としており、現在の標準治療は、術前化学療法と根治的膀胱全摘除術である。だが、膀胱全摘除術実施後の再発率は高く、予後は不良である。
NIAGARA試験において被験者は、根治的膀胱全摘除術前に術前化学療法との併用として4サイクルのイミフィンジ投与および術後に8サイクルのイミフィンジ単剤療法を、または根治的膀胱全摘除術前に術前化学療法のみを受けた。
計画された中間解析では、イミフィンジ周術期レジメンでの治療群は、対照群に対して、病勢進行、再発、手術未施行、または死亡のリスクを32%低下させた(EFSハザード比[HR]0.68、95%信頼区間[CI]0.56-0.82、p<0.0001)。EFS中央値の推定値は、対照群の46.1カ月に対し、イミフィンジを含む実薬群では未到達であった。
また、2年経過時点で対照群では59.8%が無イベントだったのに対し、イミフィンジ周術期レジメンでの治療群では67.8%であった。重要な副次評価項目である全生存期間(OS)から得られた結果は、根治的膀胱全摘除術をともなう術前化学療法と比較して、イミフィンジ周術期レジメンが死亡のリスクを25%低下させた(OS HR 0.75、95% CI 0.59-0.93、p=0.0106)。
生存期間中央値については、両群とも未到達であった。2年経過時点で対照群では75.2%が生存していたのに対し、イミフィンジ周術期レジメンを受けた患者では82.2%が生存していた。
イミフィンジの忍容性は全般的に良好であり、術前および術後補助療法において新たな安全性シグナルは観察されなかった。さらに、術前化学療法にイミフィンジを追加する治療法は、この併用療法の既知のプロファイルと一致し、術前化学療法単独と比較して患者の手術実施を妨げることはなかった。
免疫介在性有害事象(imAE)は、イミフィンジの既知のプロファイルと一致しており、管理可能でほとんどが低グレードであった。2025年2月、NIAGARA試験のデータに基づき、MIBC患者に対するNCCNカテゴリー推奨レジメンとして、シスプラチンを含む術前化学療法および膀胱全摘除術に周術期治療としてデュルバルマブ(イミフィンジ)を併用するレジメンが、NCCN腫瘍学臨床実践ガイドライン(NCCNガイドラインR)に追加された。
イミフィンジは、NIAGARA試験の結果に基づき、同様の適応症でブラジルにおいても承認されている。EU、日本、およびその他数カ国においても規制当局により審査中である。
◆NIAGARA試験の治験責任医師かつSteering CommitteeメンバーであるMatthew ND. Galsky氏(マウントサイナイ医科大学Tisch Cancer Institute泌尿生殖器腫瘍内科部長)のコメント
デュルバルマブをベースとした周術期レジメンに対する本承認は、化学療法や根治目的の手術を受けても、半数近くが再発する、筋層浸潤性膀胱がん患者さんにとって大きな進歩である。
このデュルバルマブのレジメンは、NIAGARA試験において患者さんの生存期間を有意に延長しており、治療を変革する可能性がある。
◆Dave Fredricksonアストラゼネカのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼オンコロジー・ヘマトロジービジネスユニット責任者のコメント
イミフィンジに対する本承認は、米国の筋層浸潤性膀胱がん患者さんに初の周術期免疫療法をもたらし、より優れた治療選択肢に対する大きなニーズに応える、パラダイムシフトを象徴するものである。
NIAGARA試験では、患者さんの80%以上が2年後も生存していることが示され、この革新的な周術期レジメンがこの適応症における新たな標準治療となる可能性を強く示唆している。
◆Meri-Margaret Deoudes膀胱がん支援ネットワークCEOのコメント
昨年、米国では2万人以上が筋層浸潤性膀胱がんの治療を受けており、患者さんの予後を改善する新たな治療選択肢が強く求められている。デュルバルマブの周術期レジメンに対する承認は喜ばしいニュースであり、今後、臨床医がこの病気に取り組む方法を変革し、患者さんとそのご家族に新たな希望を与えるものとなる。