アストラゼネカは27日、「イミフィンジ」(一般名:デュルバルマブ、遺伝子組換え)について、限局型小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法で国内初の免疫療法薬として製造販売承認を取得したと発表した。
厚労省による同承認は、根治的化学放射線療法(CRT)後に疾患進行が認められていない限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)を対象とした免疫療法に対する国内で初の承認である。
同承認は、P3試験(ADRIATIC試験)結果に基づくもの。同試験では、イミフィンジ群はプラセボ群に対して死亡リスクを 27%低下させた(全生存期間[OS]ハザード比[HR]0.73;95%信頼区間[CI]0.57-0.93;p=0.0104)。推定 OS 中央値は、プラセボ群が 33.4 カ月であったのに対し、イミフィンジ群は 55.9 カ月であった。
患者の3年生存率は、プラセボ群では 48%であったのに対し、イミフィンジ群では 57%と推定された。
イミフィンジ群は、プラセボ群と比較して、患者の疾患進行または死亡のリスクを 24%低下さした(無増悪生存期間[PFS]HR 0.76;95% CI 0.61-0.95;p=0.0161)。PFS 中央値は、プラセボ群が 9.2 カ月であったのに対し、イミフィンジ群では 16.6 カ月であった。2年経過時点で疾患進行が認められなかった患者の割合は、プラセボ群では 34%であったのに対し、イミフィンジ群では 46%と推定された。
小細胞肺がん(SCLC)は悪性度が高いタイプの肺がんである。日本で 2020 年に肺がんと診断された患者は 12万0759人と報告されている。SCLCは肺がんの約 15%、SCLCのうちLS-SCLC の割合は約30%とされており、国内における LS-SCLC の罹患数は約 5434人と推定される。
LS-SCLCは、標準治療である化学放射線療法に対して最初は奏効するものの、ほとんどの患者で最終的に疾患進行が認められる。LS-SCLCの予後は不良で、診断後の5年生存率は15~30%である。
◆大津智子アストラゼネカ取締役研究開発本部長のコメント
LS-SCLC と診断された患者さんの標準治療はCRT であるが、これまでCRT 完遂後の治療として承認された薬物療法はなく、30年以上もの間、治療の進展がなかった。
今回のイミフィンジに対する承認はLS-SCLC患者さんへの免疫療法を初めて可能にした画期的なものであり、この疾患における生存率改善に向けた私たちの取り組みを後押しするものである。