田辺三菱製薬は21日、運動症状の日内変動を有するパーキンソン病治療薬候補品として開発中の「ND0612」について、20日(現地時間)に欧州医薬品庁(EMA)から販売承認申請受理の通知を受領したと発表した。
ND0612は、田辺三菱製薬の完全子会社のニューロダーム社(本社:イスラエル)が開発。承認申請は、ミツビシ タナベ ファーマ ゲーエムベーハー(本社:ドイツ)が、欧州連合(EU)の全加盟国をはじめ、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインに適用されるEMAによる中央審査方式で実施した。
今回の承認申請は、レボドパとカルビドパ(LD/CD)の経口即放剤と比較したグローバルP3試験(BouNDless試験)で得られた有効性、安全性および忍容性の評価データと、後期P2試験(BeyoND試験、継続中)で得られた1年を超える長期安全性と忍容性の評価データを中心に実施したもの。
パーキンソン病は、世界に1000万人以上の患者がいると言われる進行性の慢性神経疾患で、発症原因と考えられているドパミン不足を、レボドパとレボドパ分解阻害剤(通常、カルビドパ)を組み合わせた経口剤で補う治療法が一般的である。
だが、経口剤ではレボドパの血中濃度が変動するため、薬が効きすぎて生じる不随意運動(ジスキネジア)や薬の効き目が切れるウェアリング・オフなど、運動症状の日内変動の一因となる。症状が進行すると、運動症状の日内変動が増加し、経口剤では症状のコントロールが難しくなるため、外科手術を要する治療法が主な選択肢になるという課題がある。
ND0612は、初めてのLD/CD液剤化に成功した持続皮下注製剤で、注入ポンプを用いて24時間持続注入することでレボドパの血中濃度を持続的に安定させ、薬物動態プロファイルを改善することで、日常生活に支障のあるジスキネジアを伴わないON時間の延長と、OFF時間の短縮が期待される。
ND0612は今回の欧州申請のほか、米国でも再申請に向けた手続きを進めている。田辺三菱製薬グループは、研究開発の重点領域の一つに定める中枢神経領域において、神経変性疾患に向きあうすべての人に、新しい治療の選択肢を届けるための取り組みを進めていく。