ドクタートラストは、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者257万人超のデータ(国内最大規模)を活用し、様々な分析を行っている。
今回は、2023年度にドクタートラストのストレスチェックを受検したうち、およそ12万9000人のデータをもとに、「平均睡眠時間」と「ストレス度合」の関係を調査した。
その結果、高ストレス者の7割以上が睡眠6時間未満であり、逆に低ストレス者の約7割は6時間以上寝ていることが判った。
ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促すこと、また、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。
また、ドクタートラストの提供するストレスチェックサービスでは、ストレスチェックと同時に、生活習慣に関する6つの設問が追加できる。今回、生活習慣に関する追加設問のうち「平均睡眠時間」の回答結果からストレス度合との関係を分析した。調査概要、調査結果の詳細、考察は次の通り。
【調査概要】
◆調査期間:2023年4月1日~2024年3月31日
◆調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2023年度契約企業・団体の一部
◆有効受検者数:12万8896人
【調査結果の詳細】
ドクタートラストのストレスチェックでは、個人のストレス度合を5段階(A~E)で評価している。A判定はストレスが最も低く、E判定が最も高いとされる。
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図1は、調査対象者12万8896人全体におけるストレス度合の分布である。低ストレス者(A判定)は6.0%、高ストレス者(E判定)は15.2%であった。
次に、低ストレス者、高ストレス者それぞれについて、平均睡眠時間別の分布をみていく。
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図2は、同調査対象のうち、高ストレス者と判定された1万9579人、低ストレス者と判定された7752人について、平均睡眠時間別の分布を示したグラフである。高ストレス者の72.3%が平均睡眠時間「6時間未満」と回答しているのに対して、低ストレス者では、68.0%が平均睡眠時間「6時間以上」と回答したことがわかる。
具体的には、平均睡眠時間「5時間未満」と「5時間以上6時間未満」では、いずれも高ストレス者の割合が低ストレス者の割合を上回り、差はそれぞれ23.6ポイント、16.7ポイントであった。
一方、平均睡眠時間「6時間以上7時間未満」、「7時間以上9時間未満」、「9時間以上」では、いずれも低ストレス者の割合が高ストレス者の割合を上回り、差はそれぞれ19.6ポイント、20.0ポイント、0.7ポイントであった。
【考察】
今回はストレスの高い人、低い人を対象に、平均睡眠時間の実態を調査した。高ストレス者は平均睡眠6時間未満、低ストレス者は平均睡眠6時間以上を中心に分布していることがわかった。少なくとも6時間の睡眠時間を確保することが、ストレスを予防する目安となるかもしれない。 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」においても、健康へのリスクを下げるために6時間以上の睡眠が目安として推奨されている。睡眠時間の不足している人は、日々の生活を見直すことが重要である。
文責:福田築氏(ストレスチェック研究所 アナリスト、公認心理師)