田辺三菱製薬を米投資ファンド「ベイン」に売却 三菱ケミカルグループ

筑本氏

 三菱ケミカルグループ(MCG)は7日、子会社の田辺三菱製薬を米投資ファンド「ベイン」に約5100億円で売却すると発表した。ベインは、ヘルスケアが投資の重点領域で専門のファンドを有する。
 これに伴い、本年6下旬予定の株主総会での決議などを経て、7~9月に売却する。田辺三菱製薬の新社名については、‟三菱”の名称除外は決まっており、今後ベインを中心に検討していく。
 2020年の田辺三菱製薬の完全子会社化を経て、MCGはグループ内での技術・人材の相互活用を通じ、事業間のシナジー創出に尽力したが、業界や事業構造の変化等により、化学と医薬との親和性及びシナジーの顕在可能性が希薄化していた。
 今回の譲渡は、現状では田辺三菱製薬の成長に不可欠な研究開発への大規模投資が厳しく、ヘルスケア分野への豊富な投資実績のあるベインキャピタルのもとでの成長戦略推進が最適な選択であると判断したもの。MCGは、本業の化学事業に経営資源を集中する。
 同日、田辺三菱製薬の譲渡で会見した筑本学三菱ケミカルグループ代表執行役社長は、「近年、創薬のモダィティとしてバイオが大きくなっており、化学とのシナジー創出は難しかった」と振り返った。
 その一方で田辺三菱製薬は、「人材が豊富で、R&Dの進め方、デジタル分野はケミカルと比べて進んでいた」と評価した。
 ベインを田辺三菱製薬の売却先に選んで理由については、「他の製薬企業も含めて様々な候補先があった」とした上で、「ベインから田辺三菱製薬の創薬・育薬力、日本国内における販売力の高い評価を受けた」と明言。
 さらに、「ベインは米国で非常に強いファーマチームを持っており、田辺三菱製薬の力を併せることでより一層成長できると確信した」と強調した。
 現在、田辺三菱製薬は、ラジカヴァ経口剤(ALS治療薬)による米国でのプレゼンスを展開しているが、ベインのファーマチームはアドバイスも含めて今後の田辺三菱製薬の米国事業展開を強力にサポートしていく。一方、田辺三菱製薬には、「バイオベンチャーの日本市場への参入に対するバックアップ」などを期待している。
 筑本社長は、2020年のMCGの田辺三菱製薬完全子会社化において約5000億円投資したことを踏まえて今回の譲渡価格(約5100億円)の妥当性にも言及。
 「公正な価格だと認識している」と断言し、その理由を「5年前と今では世界的に医薬事業の環境が変化している。研究開発費も大きくなり、モダリティも変わっており、現代の評価額としては妥当である」と説明した。
 譲渡後の田辺三菱製薬の人員雇用については、「一定期間ではあるが厚く配慮する約束を得ている」(荒木 謙執行役員 ポートフォリオ改革推進所管)。
 筑本社長は、「田辺三菱製薬は長年同じ屋根の下で暮らした家族で、親孝行な子供でもあり感謝している」 と訴えかけた。
 その上で、「今回、お互いがより成長するために袂を分かつが、両社のパーパス達成に向けて共に奮起する必要がある。MCGは、田辺三菱製薬の譲渡により背水の陣となる」と不退転の決意を示した。
 田辺三菱製薬に対しては、「優秀な人材とともにアセットも素晴らしい。是非一丸となってパーパスを達成してほしい」とエールを送った。


   

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