未だ92%以上の薬局が後発品不足で調剤業務に支障 大阪府薬がアンケート調査

乾氏

 大阪府薬剤師会は5日、定例記者会見を開催し、「2024年度後発医薬品を含む医療用医薬品の流通及び対応状況調査」結果を公表した。2021年度の初実施より今回で4回目となる同調査では、アンケート調査に回答した1581軒の薬局のうち、未だ92%以上の薬局が後発品の供給不安定により調剤業務に支障が出ていることが判った。一方、「希望する後発医薬品が発注数通り納品されている」のはわずか5軒であった。
 先発医薬品等では78.2%の薬局が供給に支障が出ていると回答。さらに、昨年10月からの選定療養の導入も相まって後発品不足改善の出口が見えない現状が浮き彫りになった。
 乾英夫大阪府薬会長はこれら調査結果から「後発品を始めとする医療用医薬品不足は4年間続いている。まだ解決の目途が立っていない中、地域の保険薬局の薬剤師が何とか対応している」と強調した。
 選定療養の導入についても「アンケート調査では、保険薬局においてその説明に患者1人当たり平均5分費やしており、極力混乱のないように対応している」と報告。その上で、「必要な医薬品を患者さんに供給できるように大阪府薬として支援策の検討を進めて行く」考えを示した。
 令和2020年12月、小林加工の抗真菌薬への異成分混入事故に端を発し、各後発医薬品メーカーの GMP遵守違反の結果、販売停止・回収等が頻繁に行われ、2024年11月現在3182品目(昨年12月4271品目)にも及ぶ医薬品が出荷停止・限定出荷されている。加えて、後発医薬品以外の医薬品も1161品目(昨年12月1176品目)が出荷停止・限定出荷となり、未だに後発医薬品だけではなく先発医薬品等も供給不安定な状況が続いている。
 こうした中、今回のアンケート調査は昨年11月25日から12月13日まで実施され、1581薬局が回答した。回答率は44.9%(1581/3515)。同調査結果によると、卸の納入状況では、「納品が滞り、調剤業務に影響が出る場合がある」は後発品で70.7%(前年調査69.3%)、先発品で64.8%に上る。
 「製品が流通していないため発注ができない場合が多くある」は後発品で21.5%(同26%)、先発品で13.4%に上り、これらの回答を合計すると後発品で92%、先発品で78.2%が医薬品供給に支障が出ている。
 一方、後発医薬品の入手困難状況は、「改善していると感じている」薬局は15%に過ぎず、85%の薬局が「引き続き満足に入手はできていない」と感じている。先発医薬品等においては「状況が悪くなった」、「変わらない」の回答合計が83.8%に上り、「後発医薬品とともに満足に入手できない」状況が判明した。

 現在、納品が滞っており薬局が「入手困難」と回答した割合の高い医療用医薬品(カッコ内は前年調査結果)は、鎮咳剤82%(78%)、去痰剤68%(69%)、総合感冒剤59.2%、鎮咳去痰剤56.3%と続き、前回調査と変わりがない。
 今回、抗生物質不足が新たな傾向として目についた。主としてグラム陽性・陰性菌に作用する抗生物質製剤が51%(27%)、主としてグラム陽性菌、主としてマイコプラズマに作用する抗生物質製剤が42%(12%)、主としてグラム陽性菌に作用する抗生物質製剤が41%(22%)といずれも大幅に増加している。一方、解熱鎮痛剤と漢方製剤不足は改善している。

羽尻氏


 羽尻昌功常務理事は、「MRSA対策が進んで抗生物質の使用料は減っているが、必要な時に出す投与法が進んでいる。こうした処方に対して適切な薬物療法が行えているのか心配される結果であった」とコメントした。
 今回の調査は、昨年10月からの選定療養導入も踏まえた調査も行い回答を得ている。その中で、「選定療養の制度を患者に説明するために要した平均時間」の設問から、平均5分(患者一人あたり)程度掛けていることが判明した。
 羽尻氏は、「例えば12人の来局で約1時間の業務を選定療養の説明に費やすことは大きな負担になっている」と考察し、選定療養に対する患者の理解度を問う設問結果からは「70%もの薬局において患者が全く理解されていないことが判った」と報告した。
 アンケートでは、選定療養に関する問題点として、「一生懸命説明し、後発品に変更になっても結局後発品が手に入らない」、「ヒルロイドローション(保湿剤)などの先発品と後発品で規格が違う製品(1包装あたりの容量)の取扱いに対して疑義照会が発生する」、「生活保護受給者の患者に、今までの先発品が無条件で後発品になる説明をしても納得してもらうまで時間がかかった」などの回答が寄せられた。
 羽尻氏は、これらの調査結果を総括して、「選定療養の導入が早かったのではないか。もっと後発品の供給が安定してから開始するべきだったと思う」と語った。
 また、現状の医薬品の流通及び医薬品に係る意見では、「物価が上昇するなか、製薬業界は薬価引き下げによる製造コスト維持が限界に来ており、販売中止品、出荷調整品が増大している。適正薬価への見直しをお願いしたい」、「国はかかりつけ薬局を進めているが、実績に応じて納品されるので、薬がないから門前で調剤した方がスムーズに調剤できる確率が高い。現行の方針と矛盾している」、「薬局間の分譲が難しくなってきている。お互い事情(出荷調整中)がわかっているので頼みにくい」などの問題点が指摘された。
   

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