アストラゼネカのカルケンス錠(一般名:アカラブルチニブマレイン酸塩水和物)は、昨年12月27日、成人の慢性リンパ性白血病(CLL)(小リンパ球性リンパ腫[SLL]を含む)を対象に製造販売承認を取得した。
厚労省による同承認は、消化管の pH 条件に関わらず薬物が全て溶出するように改善した溶解性プロファイルを有するアカラブルチニブマレイン酸塩水和物 100mg(遊離塩基換算)フィルムコーティング錠に対するもので、海外の健康被験者を対象に、新たな剤形となるカルケンス錠を投与した D8223C00013試験の結果に基づいている。
カルケンスは、選択的かつ不可逆的なブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であり、現在、国内では慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の成人患者に対する治療薬として承認されている。
カルケンスカプセル カは、pH4を超える条件下では溶解性が低いことに関連して、国内添付文書では、プロトンポンプ阻害剤(PPI)との併用は可能な限り避け、 H2 受容体拮抗剤及び制酸剤との併用では投与間隔を2時間以上あけて投与することについて注意喚起していた。
だが、血液がん患者の20~40%は、胃内pHを変化させる薬物の投与を受けていると推定されており、カルケンスカプセルの使用は制限されていた。
CLL/SLLは、白血球の異常産生により引き起こされ、世界中の成人においてもっとも多くみられるタイプの白血病であり、患者数が増えると予測されている。一次治療では、約4万人の患者が従来の標準治療を受けている。
CLLは、欧米ではもっとも患者数の多い白血病であるが、日本および東アジアでは稀な疾患と見なされており、新たに診断される患者は、日本全国で1年間に10万人当たり1人未満である。
CLL/SLLは、不治のがんと考えられているが、患者は同疾患を罹患した状態での生存期間が長く、継続的な治療が長期にわたり続く場合も多くある。
◆大津智子アストラゼネカの取締役研究開発本部長のコメント
今回の承認は、CLL/SLL 治療におけるニーズを理解し、患者さん中心の治療ソリューションを提供するという当社の取り組みを強調するものである。
がん患者さんは多剤併用する場合が多く、胃内pHを変化させる薬物も一般的に投与されている。本承認によりカルケンス錠がPPI 等の胃酸分泌抑制剤とともに服用できるようになったことは服薬レジメンの簡素化につながり、より多くのCLL/SLL患者さんに本剤によるベネフィットをもたらすことが期待できる。