イーライリーは12日、ミリキズマブについて、複数年にわたる二つのP3試験結果において潰瘍性大腸炎とクローン病で唯一の IL23p19拮抗薬として数年間にわたる持続的有効性・安全性データを示したと発表した。
同試験結果において、ミリキズマブにより寛解が認められた中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎患者の80%以上が、3年後も長期寛解を維持、日常生活に支障をきたす便意切迫感などの症状を経験しなかった。同剤は、中等症から重症の活動期クローン病患者の50%以上で、最長5年の長期にわたる内視鏡的寛解をもたらした。
これら二つの臨床試験(中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎におけるLUCENT-3試験と中等症から重症の活動期クローン病におけるVIVID-2試験)結果は、10月25日~30日にフィラデルフィアで開催された米国消化器病学会(ACG)で発表された。
ミリキズマブは、IL-23のp19サブユニットに選択的に結合し、IL-23受容体との相互作用を阻害するヒト化抗ヒトIL23p19モノクローナル抗体製剤である。IL-23経路の過剰な活性化による炎症は、潰瘍性大腸炎とクローン病の発症機序において重要な役割を果たす。潰瘍性大腸炎とクローン病に由来する炎症は、便意切迫感などから健康関連の生活の質(QOL)を低下させ、放置すると不可逆的な合併症を招く可能性がある。
ミリキズマブは、米国で中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の成人患者の治療薬として承認されており、中等症から重症の活動期クローン病の治療薬としては、FDAによる審査が進行中である。
潰瘍性大腸炎の成人患者における長期データLUCENT-3試験において、中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の患者を対象としたミリキズマブの投与例では、粘膜治癒として定義される組織学的および内視鏡的粘膜寛解を達成するなど、長期転帰の改善が認められた。
また、ミリキズマブは、症状、臨床評価、内視鏡検査や組織学検査などの評価項目のいずれについても、最長で3年に及ぶ持続的な改善をもたらし、同結果は過去のTNF阻害薬,トファシチニブ又は他の生物学的製剤に対する治療不良歴の有無にかかわらず認められた。
LUCENT-2試験の1年時点での評価において臨床的寛解を達成した患者では、その後2年間(試験全体では最長3年間)で、次の結果が認められた(observed case解析を用いた結果)
・ 81%の患者が長期にわたる臨床的寛解を達成
・ 82%の患者が長期にわたる内視鏡的寛解を達成
・ 72%の患者に粘膜治癒がみられた
・ 79%の患者がステロイドフリーの臨床的寛解を達成
・ 便意切迫感の症状スコアにおいて臨床上意義のある低下の持続を示した(-4.72)
安全性データについては、LUCENT-3試験でミリキズマブの投与を受けた患者のうち、7.4%に重篤な有害事象が認められ、5.3%が有害事象のため治療を中止した。中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の患者における長期安全性プロファイルは、これまでのミリキズマブの安全性プロファイルと同様であった。
クローン病の成人患者における長期データP2試験からVIVID-2長期継続試験に移行した患者から新たに得られたデータにより、ミリキズマブの投与を受けた中等症から重症の活動期クローン病患者は、高い割合で臨床的寛解と内視鏡的寛解を維持したことが明らかになった。3年間の追加投与期間(試験全体では最長5年間)において次の結果が認められた(observed case解析を用いた結果)。
・ 96%の患者がクローン病活動指数(CDAI)による臨床的改善を達成
・ 87%がCDAIによる臨床的寛解を達成
・ 76%が内視鏡的改善を達成
・ 54%が内視鏡的寛解を達成
安全性データでは、VIVID-2長期継続試験に移行した患者のうち、8.5%に重篤な有害事象が認められ、1.9%が有害事象のため治療を中止した。中等症から重症の活動期クローン病の患者における長期安全性プロファイルは、これまでのミリキズマブの安全性プロファイルと同様であった。
オンボー(ミリキズマブ)は、2023年3月に日本において、2023年10月に米国FDAより中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の成人患者を適応とする初のIL23p19拮抗薬として承認を受け、現在世界44カ国で承認を取得している。
イーライリリーは、米国、カナダ、欧州、日本および中国など世界各国においてミリキズマブのクローン病治療薬としての適応追加申請を提出しており、今後 さらなる国・地域での申請を予定している。
また、同社は、潰瘍性大腸炎を対象にミリキズマブとeltrekibart(好中球の炎症部位への遊走に関与するCXCR1およびCXCR2ケモカイン受容体を介するシグナル伝達に関わる7種類のリガンドに結合するヒト化モノクローナル抗体)の併用療法を検討する試験(NCT06598943)を実施している。
さらに、炎症性腸疾患の転帰改善につながる新たな治療選択肢となりうる治療薬候補として、経口小分子化合物であるα4β7インテグリン選択的阻害薬MORF-057について、潰瘍性大腸炎(NCT05611671)とクローン病(NCT06226883)を対象とする臨床試験を実施中である。
◆Mark Genoveseリリー自己免疫疾患開発部門シニアバイスプレジデント(医師)のコメント
ミリキズマブは、潰瘍性大腸炎とクローン病において、数年間にわたる持続的な有効性データを示した唯一のIL23p19拮抗薬である。これは、免疫系疾患とともに生きる人々の長期寛解を可能にし、疾病の負担を軽減することを目指す私たちの取り組みの成果である
◆Bruce Sandsマウントサイナイ・アイカーン医科大学医学部Dr. Burrill B. Crohn医学部教授(Dr. Henry D. Janowitz消化器科チーフ医師)のコメント
治療は進化を遂げているが、潰瘍性大腸炎やクローン病とともに生きる人々は、便意切迫感などの治療が難しい症状の改善をもたらし、治療効果が長期間持続する治療法を今も探し求めている。
今回の複数年にわたるデータは、ミリキズマブが腸の治癒を長期間維持し、患者さんの生活の妨げとなる症状の改善をもたらすことを明らかにしている。