「在宅における心不全ICTモニタリングプロジェクト」経産省ヘルスケア産業基盤高度化推進事業に採択 オムロン ヘルスケアと京都府立医大

左から的場聖明教授、濵口剛宏オムロン ヘルスケア 技術開発統轄部統轄部長

 オムロン ヘルスケアと 的場聖明京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学教授らの研究グループが行う「在宅における心不全ICTモニタリングプロジェクト」が、経済産業省が実施する令和6年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業に採択された。
 同プロジェクトは、ICTを活用して心不全患者の増悪を未然に防ぐことを目的とした実証調査だ。オムロンヘルスケアの心電計付き上腕式血圧計や通信機能付き体重計を用いて、心不全患者が家庭で計測したバイタルデータを医療機関と共有し、患者の状態に応じて医療従事者が適宜介入することで増悪防止に寄与するかどうかを確認する。
 実証調査は、京都府立医科大学が中心となり心不全の予後改善を目的としてスタートした病診連携プラットフォーム「京都心不全ネットワーク」内の複数の医療機関で実施する。2022年4月から実施したパイロット試験Ⅰ実証調査では被検者30人のうち1名の心不全増悪を捉えることができ治療介入に至った。
 さらに、今月からは実際の医療現場である京都府立医科大学附属病院と洛和会音羽病院でパイロット試験Ⅱ実証調査を開始する。医療機関が遠隔で心不全患者をモニタリングする上で必要な要件や課題を洗い出し、社会実装に向けたサービス改善につなげる。
 日本における死因第1位は悪性新生物(がん)、第2位が「心疾患」であり、死亡率の年次推移データからも心不全患者数は増加傾向にある。
 現在、心不全患者は120万人を超え2030年には130万人まで増加し、心不全を含む心疾患の医療費は2兆円を超えるといわれている。また、心不全は加齢とともに発症率が高まる。
 超高齢社会を迎える日本において、現在の診療体制では医療従事者や病床数が不足し対応しきれなくなる「心不全パンデミック」の発生が危惧されている。心不全は、急激な悪化(増悪)を繰り返すたびに重症化が進み死亡率が高まる。
 さらに、入退院の繰り返しや日常生活における制限など患者のQOLを低下させる要因ともなる疾患である。一方で、増悪前の適切なタイミングで治療介入することで、再入院率や死亡率を大幅に低減されることがわかっている。
 同プロジェクトは、心不全患者が家庭で取得したバイタルデータを、オムロンヘルスケアのスマートフォン健康管理アプリ「OMRON connect(オムロンコネクト)」 を介して収集し、同アプリ内の医療従事者向け画面で確認するなど医療施設内でモニタリングするというもの。
 医療従事者は患者のバイタルデータを元に心不全の増悪兆候を検知し、適切なタイミングで介入することで、心不全の増悪や入院を予防する。従来の心不全治療では、体重や血圧、息切れやむくみなどの自覚症状と服薬状況を記録する心不全手帳が活用されているが、容体変化の把握が遅れ適切なタイミングで受診行動に繋がらないなどの課題が見受けられた。

 オムロンヘルスケアと京都府立医科大学は、これまでも「心電計付き上腕式血圧計による術後管理」に関する共同研究など心疾患領域を中心として、よりよい治療の実現を目指してきた。今後、両者は同プロジェクトで行う心不全モニタリングサービスの社会実装を京都から開始して全国に展開する予定である。全国の心不全患者における再入院率および死亡率の低減を目指す。

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