全国がん登録情報活用した日本初の全国規模肺がん発見経緯ごとの予後研究開始 アストラゼネカ

 アストラゼネカは19日、全国がん登録情報(匿名化情報)を活用した全国規模では日本で初めてとなる肺がんの発見経緯ごとの予後に着目したJ-Pathway研究を開始すると発表した。
 全国がん登録情報は、厚労省が所管し、国立がん研究センターに事務および権限が委任された日本国内全てのがん患者の罹患状況、がん種、進行度、特定の治療の有無、生存期間などの情報が含まれる匿名化されたもの。
 日本では、肺がんはがんによる死因の第1位(男女計)で、罹患数は2023年に約13万2000人と予測されている。
 その一方で、2022年の肺がん検診の受診率(40~69 歳)は、男性 53.2%、女性 46.4%に留まり、国が定める個別目標値60%に達していないのが現状だ。2020年の政府統計では、肺がんと診断された人の発見経緯は、「他疾患観察中の偶然発見」が46%と最も多く、「検診・健康診断・人間ドック」は15%に留まることが示された(図1)。

 肺がんの主な症状としては、咳や痰、血痰(痰に血が混じる)、胸の痛み、動いたときの息苦しさや動悸、発熱などが挙げられるが、早期にはこれらの症状が見られない場合が多く、症状が出た時には病状が進行している症例がある。
 また、肺がんの約8~9割を占める非小細胞肺がんの場合、ステージ別の5年生存率は、ステージⅠが74.6%、ステージⅡが47.7%、ステージⅢが28.2%、ステージⅣが8.4%となっており、早期発見がいかに肺がんの予後に大きく影響するかが伺える。
 同研究は、これまで日本において報告がなかった、全国規模の肺がん患者を対象とした、純粋に肺がんのみが死因となる場合を推定した生存率(純生存率)について、発見経緯ごとに調査することを目的としている。
 同研究で、発見経緯ごとの純生存率を解析することで、早期発見の重要性の啓発が期待される。なお、同研究における全国がん登録情報の利用にあたっては、アストラゼネカが法律に基づき国立がん研究センターに利用申出し、本年1月に承諾されている。


 アストラゼネカは、「患者さんを第一に考える」を企業バリューの一つとして、肺がんにおける治療薬の提供だけでなく、肺がん検診の啓発活動にも注力しており、同研究はその取り組みの一環となる。研究成果については、2025年ごろの公表を目指しており、行政、学会等と連携しながら、疾患啓発にこの研究データを活用していく予定である。

◆田中倫夫アストラゼネカの執行役員メディカル本部長のコメント
 本研究では、日本のすべての肺がん患者さんの情報を活用することができるため、日本全体だけでなく都道府県ごとの解析も予定している。
 当社は、肺がんの早期発見・早期治療に貢献できるよう啓発活動に取り組んでおり、本研究はこれらの取り組みをさらに前進させるものと期待している。

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