ゾコーバ 2025年度から本格的にグローバル展開 塩野義製薬手代木会長兼社長CEO

 塩野義製薬の手代木功会長兼社長CEOは13日、2023年度決算説明会で会見し、新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」について、「2025年度から本格的にグローバル展開する」考えを明らかにした。
 塩野義製薬は、中期経営計画「STS2030ビジョン」の中で2025年度の売上収益目標として5500億円を掲げており、「そのかなり大きな部分を、ゾコーバ、ゾフルーザ(抗インフルエンザ薬)のグローバル展開によって占める」見通しを示した。
 ゾコーバは、2022年11月22日に「SARS-CoV-2による感染症」の適応で日本において緊急承認を取得した。その後、通常承認申請を実施し、本年3月に日本で通常承認を受けた。
 ゾコーバの通常承認は、日本、韓国、ベトナムで実施したP2/3試験(SCORPIO-SR試験)の良好な結果2に基づくもの。同試験は、オミクロン株流行期に重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無にかかわらず幅広い軽症/中等症のCOVID-19患者を対象に実施されたもので、その第3相パートにおいて、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状に対する同剤の改善効果(主要評価項目)および抗ウイルス効果(主要な副次評価項目)が確認された。
 2023年度の国内のゾコーバ+インフルエンザファミリーの売上収益は734億円。2022年度の売上実績は1036億円であるが、その中には日本政府によるゾコーバの購入分1000億円が含まれており、「その一過的な要因を除けば実質2022年度36億円が2023年度は734億円に大幅伸長した」(手代木氏)
 その間、昨年10月1日よりコロナ治療薬は、3割負担患者で、ゾコーバ、ラゲブリオ、パキロビッド等のどのコロナ治療薬を投与しても一律9000円となった。さらに、本年4月以降は、医療費全額に対する保険負担となり、ゾコーバ投与の場合は3割負担患者で約1万5000円を要する。
 手代木氏は、「経口コロナ治療薬におけるゾコーバのシェアはもともと1位で、本年4月以降もかなり強含みで推移しており、5月以降も続いている」と報告した。
 ゾコーバの処方率は、ピーク時の昨年9月末は22~23%であったが本年3月末で12~13%、4月は8~9%となっている。「処方率をどのように上げていくかが大きな課題であるが、ゾコーバに対する市場、医師、患者さんからの評判は極めて良い」と手応えを強調した。2024年度の国内ゾコーバ+インフルエンザファミリーの売上収益予想は対前年比9.1%増の801億円。
 ゾコーバの臨床試験については、13日にグローバルP3試験(SCORPIO-HR試験)結果が発表され、SCORPIO-SR試験同様に「優れた抗ウイルス効果」と「良好な症状改善傾向」、「高い安全性」が確認された。
 手代木氏は、「オミクロン株になってウイルス量自体は全般的に減少気味であるが、その中でゾコーバは相変わらず強い抗ウイルス効果を出している」と試験結果を解説。
 その上で、「米国、アジアを含めて各国の規制当局と協議を開始し、24年度は何らかの形で承認申請して、なるべく早く承認を受けることに集中する」と述べ、「24年度は国内販売のみになるが、25年度から本格的なグローバル展開を実施する」方針を打ち出した。現在、ゾコーバは、韓国とシンガポールで承認申請している。
 新型コロナ組み換えタンパクワクチン「コブゴーズ筋注」については、「新型コロナではmRNAワクチンが大きな貢献をしたが、今後発生するパンデミックに備えて、ワクチンのモダリティは多い方が良い」との考えを示した。
 さらに、「パンデミックが発生した時に、必要なワクチン量を一定のスピードで作れるかは、安全保障上非常に重要となる。どのくらい作ってどのくらい使って貰えるかをこれから世の中と対話していくフェーズを迎えた」と語った。
 なお、コブゴーズ筋注は、24日開催予定の厚労省薬事審議会医薬第二部会で承認可否が再審議される
 一方、開発中のがんペプチドワクチン「S-588410」は、食道がんではP2後の少し大規模試験で有効性が確認できなかったものの、膀胱がん、頭頚部がんなど他のがん種については日本、世界で医師主導の臨床試験が実施されている。
 自分の体のリンパ球を学習させる役割を担う同ワクチンは、チェックポイント阻害剤等との併用によってがん細胞の攻撃力を上昇させる可能性が期待されており、今後の開発動向が注目される。

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