アストラゼネカは27日、トルカプとフェソロデックスの併用療法について、日本でHR陽性進行乳がん治療薬として承認取得したと発表した。対象は、内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術切除不能又は再発乳癌。
厚生労働省による同承認は、P3相CAPItello-291試験の結果に基づくもの。同試験では、PI3K/AKT経路の遺伝子変異を有する乳がん患者において、トルカプとフェソロデックスの併用療法が、フェソロデックス単剤療法との比較で病勢進行または死亡のリスクを 50%低下させたことが示された(ハザード比 0.50;95%信頼区間0.38-0.65;p<0.001;無増悪生存期間(PFS)中央値7.3カ月対 3.1 カ月)。
2022年に日本で新たに診断された乳がん患者は9 万人以上で、死亡者は1万7000人以上に上る。HR陽性乳がん(エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を発現、またはその両方を発現)は、最も一般的な乳がんのサブタイプであり、乳がんの65%以上はHR陽性かつHER2低発現または陰性と考えられている。
また、PIK3CA、AKT1および PTEN の遺伝子変異が高頻度で認められ、HR陽性進行乳がん患者の最大50%がこれらの遺伝子変異を有する。HR陽性乳がんの治療には内分泌療法が広く用いられているが、進行乳がん患者は一次治療の CDK4/6阻害薬とエストロゲン受容体標的薬の併用療法に対する耐性を獲得することがあるため、さらなる内分泌療法に基づく治療選択肢が必要である。
戸井雅和東京都立病院機構がん・感染症センター都立駒込病院院長のコメント
この度のトルカプとフェソロデックスの併用療法の承認によって、ホルモン受容体(HR)陽性進行乳がんの半数となるPIK3CA、AKT1またはPTENの変異を有する患者さんに待ち望まれていた新たな治療選択肢を提供できるようになり、日本におけるHR陽性進行乳がん治療が進展した。
これらの遺伝子変異の検索は、内分泌療法をベースとする治療の効果を拡大し病勢進行を遅らせるこの併用療法の恩恵を患者さんにもたらすことになり、臨床現場において極めて重要である。
◆大津智子アストラゼネカ執行役員研究開発本部長のコメント
乳がんは、日本の女性において最も罹患率の高いがんであり、新しい革新的な治療選択肢が早急に求められている。今回、ファーストインクラスのAKT阻害薬であるトルカプが承認されたことは、乳がん患者さんの治療を向上させる重要な一歩となると期待している。