Heartseedは28日、開発中のiPS細胞由来再生医療に関して、免疫抑制剤が不要となる「自家iPS細胞由来再生心室筋細胞移植による難治性重症心不全治療法の開発」が、日本医療研究開発機構(AMED)の「再生・細胞医療・遺伝子治療産業化促進事業」に採択されたと発表した。
Heartseed では、他家 iPS 細胞から作製した純化精製心筋細胞を微小組織(心筋球)にした HS-001(開胸投与)および HS-005(カテーテル投与)を開発しており、国内で虚血性心疾患に伴う重症心不全に対し、冠動脈バイパス手術と同時にHS-001の移植を実施するP1/2試験(LAPiS試験)を実施し、患者の組み入れを進めている。
同治療は、他家iPS細胞由来の治療であるため、移植心筋の長期間の生着を目的として、免疫抑制剤を服用することが必要だ。
一方で、iPS細胞はES 細胞と異なり患者自身の細胞から作製することができ、自家iPS細胞を用いることで、免疫からの攻撃を回避でき、免疫抑制剤が不要な個別化再生医療が可能になると期待されている。
心筋再生医療でも、感染症などの点で免疫抑制剤の服用をできるだけ回避したい患者が存在するため、同社では自家iPS細胞由来心筋球(HS-045)の開発も進めている。
自家 iPS 細胞を用いた心筋再生医療は、①iPS細胞の作製に多額のコストがかかる、②異なるドナー由来のiPS細胞から安定して高純度の心筋細胞を作製することが難しい、③心筋細胞の生着率が低いーなどの課題があった。
1つ目の課題については、現在、複数の企業らが、患者一人ひとりからiPS細胞を作製し、供給する事業を進めており、技術革新でiPS細胞の作製コストが削減されつつある。
2つ目の課題についても同社において検討を進めており、複数のドナー由来のiPS細胞株から、同社の一定の分化・純化方法で高純度の心筋細胞が得られることを確認している。
3つ目の課題では、心筋細胞を心筋球と呼ぶ微小組織にすることで生着率が大幅に高まることを同社の HS001の開発において確認しており、この技術を応用できると考えられる。
今後、同事業では、引き続き複数のドナー由来のiPS細胞から心筋細胞を作製し、HS-001の開発経験から得られた心筋再生医療に必要な細胞の特性解析を実施し、品質のバラツキがどの程度あるかを検討する。
同時並行で、GMP下での自家iPS細胞由来心筋細胞の製造方法を確立し、治験開始に向けた非臨床試験を実施していく。
「再生・細胞医療・遺伝子治療産業化促進事業」の概要は、次の通り。
◆研究開発課題名:自家iPS細胞由来再生心室筋細胞移植による難治性重症心不全治療法の開発
◆研究開発期間:2023年9月~2026年3月予定
◆福田恵一Heartseed代表取締役社長のコメント
この度、自家 iPS 細胞を用いた心筋再生医療の事業化に向けてAMEDの支援を受けることができ、大変喜ばしく思っている。
iPS細胞は、患者さんご自身の細胞を使うことができる点で優れており、自家 iPS 細胞治療の実現は私の長年の想いである。様々なドナーから安定して高品質の心筋細胞を作製する技術を完成させ、本治療を世界中の患者さんにお届けできるよう、引き続き尽力したい。