ナルコレプシー治療薬TAK-994 肝毒性のため臨床試験を中止 武田薬品

 武田薬品は27日、開発中のナルコレプシータイプ(NT1)を対象とした初の経口オレキシン2受容体(OX2R)作動薬「TAK-994」について、肝毒性のため臨床試験を中止したのち、TAK-994プログラムの開発を続行しないことを決定したと発表した。
 NT1患者を対象としたファーストインクラスのTAK-994のP2試験データにおいて、同剤がプラセボと比較して、全ての用量において日中の覚醒を統計的に有意に改善し、1週間あたりのカタプレキシー発現率を低下または消失したものの、肝毒性を伴うため臨床試験を中止に至ったもの。 武田薬品では、TAK-994の臨床試験から得た学びをオレキシンの生物学的特性の深い理解に役立て、現在進めている複数のオレキシン作動薬候補の研究開発を進めていく。
 同試験データより、オレキシン2受容体がナルコレプシータイプ1の治療薬の開発に有望な標的であることが示されたため、武田薬品では、今後も複数のアセットからなるオレキシンフランチャイズの開発を推進する。
 なお、NT1患者における経口オレキシン作動薬の臨床データとして初めて発表となる同試験結果は、7月27日号のThe New England Journal of Medicine 誌に掲載された。論文の表題は、“Oral Orexin Receptor 2 Agonist in Narcolepsy Type 1”(NT1における経口OX2R作動薬)。

◆TAK-994試験治験責任医師のYves Dauvilliers氏(フランス・モンペリエ大学Gui de Chauliac病院神経科睡眠覚醒障害センター長)のコメント
 ナルコレプシーは、オレキシン(ヒポクレチン)と呼ばれる神経ペプチドの不足や欠乏が原因で生じる慢性神経疾患で、ナルコレプシーの患者さんには大きなアンメット・メディカル・ニーズがある。
 現在、多くのNT1患者さんは、日中の過度の眠気やカタプレキシーの対症療法として複数の治療薬を使用しているが、いずれの治療薬もこの疾患の根本的な原因を標的とはしていない。
 本試験は、ファースト・イン・クラスのOX2R作動薬であるTAK-994を他のナルコレプシー治療薬と比較する試験ではないが、覚醒に関する客観的指標、日中の眠気に関する自己報告評価やカタプレキシーの頻度に対する本剤の有効性は著しいものであった。
 だが、TAK-994は肝毒性を伴うため、忍容性の高い、新たなOX2R作動薬の試験が強く望まれている。

◆Sarah Sheikhニューロサイエンス疾患領域ユニットヘッドのコメント

 当社は、オレキシンの研究開発のリーダーとして、TAK-994の臨床試験から得た学びをオレキシンの生物学的特性の深い理解に役立て、現在進めている複数のオレキシン作動薬候補の研究開発を進めていく。我々は、ナルコレプシーをはじめとする過眠障害と共に生きる方々に革新的な治療薬を開発し、お届けできるよう、今後も努力していく。また、当社は、この機序が役立つ他の適応症の検討も進めたい。現在開発中のオレキシンプログラムには、経口OX2R作動薬である TAK-861と 静脈内投与のOX2R作動薬であるdanavorexton(TAK-925)などがある。TAK-861は現在、臨床第2相試験が2試験行われており、ナルコレプシータイプ1(NCT05687903)およびナルコレプシータイプ2(NCT05687916)を対象としている。danavorexton(TAK-925)については、全身麻酔後の閉塞性睡眠時無呼吸の患者さんを対象とした臨床第2相試験(NCT05814016)を実施中である。

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