MSDは6月29日、キイトルーダについて、切除可能なII期、IIIA期、IIIB期の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する周術期療法を評価するP3試験(KEYNOTE-671試験)において、良好な結果が得られたと発表した。
周術期療法には、術前補助療法(ネオアジュバント療法)および術後補助療法(アジュバント療法)が含まれる。
フォローアップ期間25.2カ月(中央値)の後、切除可能なII期、IIIA期、IIIB期のNSCLC患者におけるキイトルーダと化学療法との併用による術前補助療法とそれに続く切除およびキイトルーダ単独の術後補助療法(キイトルーダ群)は、プラセボと化学療法による術前補助療法とそれに続く切除およびプラセボによる術後補助療法(化学療法+プラセボ群)と比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に改善し、疾患の再発、進行または死亡のリスクを42%(HR=0.58 [95% CI, 0.46-0.72]; p<0.00001)低下させた。
キイトルーダ群のEFSの中央値は未到達(95% CI, 34.1-NR)で、化学療法+プラセボ群では17カ月(95% CI, 14.3-22)であった。
同試験では、引き続きもう一つの主要評価項目である全生存期間(OS)のフォローアップを実施する。今回の中間解析時点において、キイトルーダ群では化学療法+プラセボ群と比較してOSの良好な傾向(HR 0.73 [95% CI, 0.54-0.99]; p=0.02124)が認められたが、イベント数は177件と限られており、OSのデータは不完全で、統計学的な有意水準に達していなかった。
同試験におけるKキイトルーダ群の安全性プロファイルはこれまでに報告されている早期および転移性のNSCLCにおける安全性プロファイルと一貫しており、新たな安全性の懸念は特定されなかった。
この結果は2023年6月3日に、2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会でクリニカルサイエンスシンポジウム「The Promise of Neoadjuvant Immunotherapy Across Solid Tumors(様々な固形がんに対する有望な術前の免疫療法)」で発表され、同時にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌にも掲載された。
サブグループ解析では、キイトルーダ群においてPD-L1発現別、組織型別、病期別で一貫してEFSの改善が示された。キイトルーダ群では、化学療法+プラセボ群と比較してPD-L1の発現状況にかかわらずEFSイベントのリスクが低下した(tumor proportion score [TPS] ≧50% [n=266] HR=0.42 [95% CI, 0.28-0.65]; [TPS] 1-49% [n=242] HR=0.51 [95% CI, 0.34-0.75]; [TPS] <1% [n=289] HR=0.77 [95% CI, 0.55-1.07])。
また、同様に組織型(非扁平上皮 [n=453] HR=0.58 [95% CI, 0.43-0.78]; 扁平上皮 [n=344] HR=0.57 [95% CI, 0.41-0.77]) )および病期(II期 [n=239] HR=0.65 [95% CI, 0.42-1.01]; IIIA期 [n=442] HR=0.54 [95% CI, 0.41-0.72]; IIIB期 [n=116] HR=0.52 [95% CI, 0.31-0.88])にかかわらずキイトルーダ群でEFSが改善した。
病理学的完全奏効(pCR)の達成は良好な予後に対する予測因子であるが、探索的サブグループ解析において、pCRが得られたかどうかにかかわらず、キイトルーダ群においてEFSイベントのリスクの減少が認められた(pCRが得られた: HR=0.33 [95% CI, 0.09-1.22]; pCRが得られなかった: HR=0.69 [95% CI, 0.55-0.86])。
◆KEYNOTE-671試験の首席治験責任医師のHeather Wakelee氏(スタンフォード大学医学部教授、International Association for the Study of Lung Cancerのプレジデント、博士)のコメント
従来、手術で切除した早期の非小細胞肺がんの半数以上が再発している。この試験結果では、術前および術後のペムブロリズマブ群では術前の化学療法群と比較して、PD-L1の発現状況や病理学的完全奏効が得られたかどうかにかかわらず、再発、進行または死亡のリスクが42%と有意に低下した。
この非常に有望な無イベント生存期間データは、切除可能なII期、IIIA期、IIIB期の非小細胞肺がん患者さんに対するこの周術期療法の可能性を示すものである。