アストラゼネカは15日、京都市、京都大学およびヘルステック研究所と共同実施している肺がんの早期診断・早期治療の実態を明らかにする共同研究結果を発表した。
行政医療データを解析・調査するための共同研究は、京都市におけるがん検診受診率や肺がん患者さんの治療パターン、予後などに関するもので、肺がん領域における京都市民の健康増進や更なる医療の質向上を目的としている。2021年5月に京都市と合意した覚書に基づいて実施され、 早期発見・早期治療は生存は勿論、医療費の観点からも重要で、改めて早期発見と早期治療の重要性を理解する上で重要なデータが示された。
いる。なお、同結果は4月21日付けで Thoracic Cancer に掲載されている。
共同研究は、京都市が保有する統合データ(国民健康保険及び後期高齢者医療制度加入者の医療レセプト、健診結果、介護認定情報、介護レセプト等を統合したデータベース)を対象としたものだ。
2013から2018年度に京都市で肺がんと診断され、治療を受けた患者のうち、2年以上の観察期間を有する2609名を対象に、初発の非小細胞肺がん患者において、初回治療が手術療法であったグループ(手術群)と、それ以外の治療(非手術群:薬物療法もしくは放射線療法)に分け、患者の背景、生存期間、初回治療後の総医療費について解析・調査を行った。
研究対象患者2609名のうち、手術群は1035名、非手術群は1574名であった。非手術群は、手術群と比べて高齢であり、男性の割合が高く、介護度も高い傾向があった。
また、5 年後における生存率は、手術群で75%に対し、非手術群は25%未満であった。生存期間に応じた総医療費では治療後6ヶ月の時点では、手術群の中央値240万9000円(四分位範囲2064 – 3224)に対し、非手術群の中央値 295万1 000円(1600 – 4706)であった。
その後、生存期間が延びるにつれて、手術群、非手術群ともに総医療費は増加傾向にあり、4年後までの総医療費では、手術群の中央値 525万7000円に対し、非手術群の中央値1020万2 000円であった。
同研究の結果、早期発見・早期治療が生存の観点からも医療費の観点からも重要であり、改めて早期発見と早期治療の重要性を理解する上で重要なデータが示された。
同共同研究においては、既に京都市との間で研究期間の延長が合意されており、同市における肺がん検診の受診率や治療パターン、予後など行政医療データをさらに詳しく解析・調査してその結果を発表していく予定である。
◆田中倫夫アストラゼネカの執行役員・メディカル本部長のコメント
アストラゼネカでは「患者さんを第一に考える」を企業バリューのひとつとして肺がんの早期診断に取り組んでいる。今回の調査結果から、早期発見により手術を受けることができた患者さんにおいては、術後の経過が良好であり、総医療費においても負担が少ないことが示された。
今回の結果に加えて今後の更なる解析により、肺がんの早期発見・早期治療に寄与することで医療に関連するさまざまな課題解決に貢献できると期待している。。
引き続き、本共同研究を通じた産学公の連携により、京都市民の皆さまの健康増進の一助となれるよう努めていく。
◆門川大作京都市長のコメント
日本人の死因トップとなる「がん」の中でも、死亡者数が最も多い肺がん。その早期発見・早期治療の大切さが、本市の有するデータによって改めて明らかになった。本研究成果は、京都の強みでもある産学公連携の賜物である。アストラゼネカはじめ関係者の皆様に、心から感謝申し上げたい。
◆石見拓京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻予防医療学分野教授のコメント
自治体の持つビッグデータに含まれる価値を十分に引き出し、社会へ還元するためには、今回のような産官学民連携した取り組みが不可欠であり、こうした取り組みを継続できる体制の構築を目指している。