コンタクトレンズにも搭載可能なセンサ感度2000倍の無線回路開発 早稲田大学

糖尿病網膜症や敗血症の無線測定システム開発に期待

 早稲田大学大学院情報生産システム研究科の高松泰輝助手、三宅丈雄教授の研究グループは10日、新しい原理の無線回路(パリティ時間[PT]対称性共振結合回路[並列接続])を開発し、センサ感度が2000倍に改善することを確認したと発表した。
 同技術によって、これまで計測が困難であった涙中糖度(0.1 – 0.6 mM)の無線計測が可能となり、コンタクトレンズに搭載することで糖尿病網膜症や敗血症を無線で測るシステム開発が期される。
 同システムは、検出器側に負性抵抗を搭載することで効果を得るため、従来型センサ回路をそのまま利用できる特徴を有している。 同技術によって、これまで計測が困難であった涙中糖度(0.1 – 0.6 mM)の無線計測を実現した。すなわち、健常者(平均値0.16±0.03 mM, 0.1-0.3 mM)と糖尿病患者((平均値0.35±0.04 mM, 0.15-0.6 mM)を数値で評価することを可能とし、世界で失明原因第1位の糖尿病網膜症の治療効果や予防に貢献し得るものとして注目される。
 さらに、皮膚を介した血中乳酸の計測も本計測システムで実現したため、2.0mM以上で致死率が増加する敗血症のモニタリングへの応用も期待される。同研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)大学・エコシステム推進型大学推進型、東電記念財団、カシオ科学振興財団の助成によって実施されたもので、「Advanced Materials Technologies」に8日にオンライン版で公開された。
 今回の研究により、高感度で高利得な無線センサおよび計測システムを構築に成功した。ここでは、敗血症(乳酸アシドーシス)のバイオマーカーで知られる血中乳酸を測定対象とし、敗血症が疑われる患者の乳酸濃度(0-4.0 mM)を無線で測れることが確認された。
 従って、同技術は、従来技術と比較して高感度・高利得などの技術的優位性を持ち、かつ、体表および体内埋め込みなど目的とする無線計測システム(センサ・リーダ・システム)として、幅広く利用することができる。

◆今後の課題・研究者のコメント
 今後はこの研究成果の事業化に向け、本計測レンズを用いて医学部眼科の医師と共同で臨床試験に取り組んでいく。また、本プロジェクトにご興味のある企業からの問い合わせをお待ちしている。

◆同研究内容に関するお問い合わせ先:三宅丈雄早稲田大学大学院情報生産システム研究科教授
Tel: 093-692-5158
E-mail: miyake@waseda.jp

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