少子高齢化に伴うケア人材の未充足に着目した新プロジェクト CHANGE始動! ナノ医療イベーションセンター

 ナノ医療イノベーションセンター(所在:川崎市、iCONM)は21日、同センターが中核拠点を務める COI-NEXT 「レジリエント健康長寿社会の実現を先導するグローバルエコシステム形成拠点」について、呼称を「CHANGE」、拠点カラーを「アプリコットオレンジ」と定め、拠点ロゴを設けたことを明らかにした。
 COI-NEXT が謳う「人が変わる。社会が変わる。大学が変わる」というキャッチフレーズを基盤とし、CHNACEのC にTを重ねるとCHANGEになるというC to G with Tsを表している。ロゴは、新たな夜明けとして海面に昇るアプリコットオレンジ(看護の暖かさ)の CHANCE に工学のトーンで描いたT を重ねたデザインとなっている。
 iCONMは、CHANCE(好機)を捉え、優れた Technology(技術)と Talent(人材)に加えて、多様性に対する Tolerability(寛容性)そして Thoughtfulness(思いやり)をもって社会に CHANGE(変革)をもたらす活動を展開する。
 プロジェクトCHANGE は、文部科学省/JST による「令和4年度共創の場形成支援プログラムCOI-NEXT」(共創分野・本格型)に川崎市産業振興財団(KIIP)が代表機関となり申請し、2022年10月25日に採択が決まった研究開発プロジェクト。少子高齢化に伴うケア人材の未充足に着目し、医師・看護師でなくても誰もが家で簡便に使える、例えば、新型コロナ患者の在宅療養で不可欠なものとなったパルスオキシメーターのような検査機器を最先端の科学技術を駆使して創出し、並行して市民のケアマインドとケアリテラシーの醸成により、家族による看護の質を向上を狙いとしている。
 また、研究者の興味や思考だけで研究が進み、ユーザー(例えば市民や看護師)のニーズとかけ離れることのないように、研究途上でも交流イベントなどを通して研究内容に共感を得る機会を設ける。
 来年3月27日に開催予定のCHANGE キックオフシンポジウム(ハイブリッド開催の予定)では、プロジェクト CHANGE の概要と研究開発テーマの紹介に続けて、将来を担う若手の看護師や現役高校生と CHANGE 研究者の間で行われたワークショップの結果を公開。併せてパネルディスカッションを開催し、将来の看護のあり方について議論を深める予定だ。プロジェクトCHANGEの研究テーマとリーダーは次の通り。

◆研究開発課題1(リーダー︓東京大学大学院工学系研究科 内田建教授)
 現在、血液検査をはじめ、医療機関に出向かなくてはできない検査は少なくない。研究開発課題1では、そういった検査をできる限り在宅でできるようダウンサイジングし、非侵襲的手法(例えば採血に代わる生化学的検査など)にするための研究を進める。
 さらに、家庭で普通に日常生活を過ごす間に、居室に設置されたセンサー(例えば呼気中の微量成分を検出するセンサー)が健康状態をチェックできる仕組みを開発する。

◆研究開発課題2(リーダー︓東京医科歯科大学 松元 亮 研究教授)
 患者の病状にあわせた投薬管理は臨床薬学上重要であるが、在宅においては容易なことでない。体液中にある特定のバイオマーカーを測定すると同時に、その値に応じた適切な量で薬剤を自動投与できる貼付式の薬剤血中濃度管理装置を開発することで、在宅における投薬管理の適正化を図る。
 また、吸入や貼付で投薬可能なバイオ医薬品製剤を開発し、医療機関に出向かなくても在宅医療で使用できるようにする。

◆研究開発課題3(リーダー︓東京工業大学科学技術創成研究院 西山伸宏 教授)
 老化の予兆に関する研究が近年活発に行われており、そのメカニズムが次第に解明されつつある。これらの知見を基に、体内での老化の予兆を早期に発見する診断法の開発により、サルコペニアなどの加齢性疾患を予防する。
 また、体内に発生した老化細胞をターゲットとした治療技術やワクチンを開発し、老化の進行を遅らせることで健康寿命の延伸に繋げる。

◆研究開発課題4(リーダー︓東京大学大学院医学系研究科・グローバルナーシングリサーチセンター五十嵐歩准教授)
 病院とは異なり、在宅医療では看護師が24時間患者に寄り添うことはできない。看護師に代わり家族を含む一般市民が看護に携わるための知識と理解力(ケアリテラシー)の醸成を行う学習ツールやシステムを開発し、同拠点の研究推進機構との連携の下、それを実践する。
 また、同拠点の研究室で創出された研究成果を実社会で実証する場の構築を、川崎市看護協会や川崎市立看護大学、総合川崎臨港病院の協力のもとで行う。

◆研究開発課題5(リーダー︓東京工業大学環境・社会理工学院 仙石愼太郎 教授)
 イノベーションが創出されても、今の制度や倫理感とそぐわないことが多々ある。同拠点プログラムで実施される研究の成果がスムーズに社会実装されるためには、それらを見越した制度改革と倫理的側面からの考察を識者とともに検討し、リフレクションペーパーとしてまとめておくことが必要となる。
 研究課題5では、社会科学的な観点からプログラム全体を俯瞰し、将来的に必要となるアイテムを国立医薬品食品衛生研究所など Transrational Researchに経験豊富な機関と連携して準備する役割を担う。

タイトルとURLをコピーしました