武田薬品は20日、maribavirについて、欧州医薬品評価委員会(CHMP)が移植後の既存療法に対して抵抗性(抵抗性無しも含む)を示す難治性のサイトメガロウイルス(CMV)感染症の成人患者に対する承認について肯定的見解を示したと発表した。
欧州委員会(EC)は今回のCHMPの肯定的見解を検討し、今後数ヵ月間に販売承認に対する判断を下す。承認された場合、maribavirは欧州連合(EU)においてこの適応について初のCMV特異的UL97プロテインキナーゼ阻害薬となる可能性がある。
今回のCHMPの肯定的見解は、抵抗性(抵抗性無しも含む)を示す難治性のCMV感染患者の治療薬として従来の抗ウイルス療法(ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビルのいずれか1つ以上の治療)に対するmaribavirの安全性および有効性が評価されたSOLSTICE試験に基づくもの。
CMVは、ヒトに多く感染するベータヘルペスウイルスであり、さまざまな成人集団の40~100%で感染歴を認める血清学的エビデンスがある。通常、体内に潜伏し、無症候性であるが、免疫抑制期間中に再活性化する場合がある。免疫機能が低下した人では、重篤な疾患を発現するケースがあり、こうした人にはHSCTやSOT5を始めとする、さまざまな種類の移植に関連した免疫抑制剤の投与を受けている患者も含まれる。
世界における1年あたり推定20万件の成人移植のうち、CMVは移植後の患者さんが経験する最もよくみられるウイルス感染のひとつであり、推定発現率はSOT後の患者で16~56%、HSCT後の患者で30~70%。2019年に欧州および近隣諸国において3万4000件超のSOT7と4万8000件超のHSCT8が実施された。
移植後の患者でCMVが再活性化すると、移植臓器の喪失などの深刻な結果に至る可能性があり、極端な場合では死に至ることもある。移植後のCMV感染に対する既存の治療法は重篤な副作用を呈する可能性があり、用量調節を必要とすることや、ウイルスの複製を十分に抑制できない可能性がある。
さらに、既存の治療法では、投与のために入院を要することや入院が長期化する場合がある。
一方、maribavirは、経口投与可能な抗CMV化合物であるmaribavirはpUL97プロテインキナーゼとその天然基質を標的として阻害する最初で唯一の抗ウイルス剤だ。
2021年11月、maribavirは、移植後の成人患者と小児患者(12歳以上で体重が35 kg以上)における既存の抗ウイルス療法であるガンシクロビル、バルガンシクロビル、シドフォビルまたはホスカルネットに対して遺伝子型抵抗性(無しも含む)を示す難治性のCMV感染/感染症治療薬として米国FDAにより製品名「LIVTENCITYTM」として承認された。
欧州委員会の最終判断待ちであることに加え、他の世界各国の保健当局への申請が進行中である。
◆ダニエル・カラン武田薬品希少疾患領域ヘッドのコメント
移植後のケアは移植後の患者さんにとってきわめて重要であり、CMV感染は患者さんの良好な転帰を脅かす可能性がある。
maribavirの販売承認に関する今回のCHMPの肯定的見解は、欧州全土における移植患者さんとその医療従事者のCMV治療環境の再定義とこのコミュニティの大きなアンメットニーズへの取り組みに向けた前向きな一歩である。