不妊治療の保険適用で不妊治療のハードルが低下  メルクバイオファーマが意識調査

 メルク日本法人のメルクバイオファーマは、第6回 「妊活・不妊治療・子育て」と「仕事」の両立に関する意識と実態調査の結果を発表した。
 同調査は、日本における不妊治療を含む妊活ならびに子育てと仕事の両立に関する意識と実態について、20~40代の男女を対象に実施したもので、事前調査は20~40代の男女3万人、本調査は高校生以下の子どもがいる20〜40代の有職者1200人が回答した。調査期間は、本年3月16日~18日。
 主な調査結果は、次の通り。
1.20〜40代男女3万人の46.2%が子どもを望むも、21%が不妊の悩みを経験している。

 妊活や不妊治療は30代に最も多く、29.5%が妊活し、11.2%は不妊治療も経験している。

・男女3万人の46.2%が「子どもを授かりたい」(昨年49.8%)と望んでおり、20代では67.3%が子どもを望んでいる。

・21.4%が不妊に悩んだ経験があり、 30代は25.6%、40代は24.1%と4人に1人が不妊の悩みを経験している。

・22.5%が妊活経験あり、9.3%は不妊治療を経験している。30代では29.5%が妊活し、11.2%が不妊治療を経験している。

2.子どもを授かり育てることの妨げの一つとなるのが「お金」の問題

4月からの不妊治療の保険適用で、61.4%が「不妊治療のハードルが下がる」と回答

・子どもを望んでいる人のうち、 20.9%は「今すぐ」ほしいが、64.4%は「今すぐではない」と回答。理由は「経済的に余裕がない」から。

・働きながら子どもを育てるために必要なことは、「経済的支援」(64.4%)、「パートナーの支援や理解」(59.8%)、「会社の支援」(59.0%)、「家族の支援や理解」(52.9%)。授かるにも子育てにも「お金」の問題は上位に。

・今年4月からの不妊治療の保険適用制度。60.4%が制度を認知し、61.4%が「不妊治療のハードルが下がる」と回答。

3.子育て中の働く男女の、子育てと仕事の両立

働く女性の14.0%は子育て退職している! 3人に1人は退職・転職・異動を経験

・子育て中の働く男女の子育て参加率を自己評価、女性91.4%:男性51.6%。女性の自己評価は男性より40ポイント高い。

・49.0%が「職場の子育て支援制度」が整っており、44.7%が「仕事と子育てを両立しやすい」と回答。

・54.5%が「上司の協力」、61.8%が「同僚の協力」がある。

・一方、子どものための有給取得は希望通りには至らず。子どものイベントで有給をとりたい77.7%、実際取得は55.3%と2割差。

・子育てと仕事の両立悩みTOP4 「経済的な負担」(61.4%)、「時間的制約」(61.1%)、「体力的な負担」(57.0%)、「精神的な負担」(53.6%)。

・働く女性の約半数(45.2%)が、子育てと仕事の両立は「キャリア形成にマイナスの影響がある」と感じている。

・子育てのために「退職」した女性は14.0%も。働く女性の3人に1人(35.7%)が子育てのために退職・転職・異動を経験。

4.子育てや介護などと仕事の両立ができる企業のあり方「ファミリーフレンドリー」

子育て中の働く男女の71.4%が「魅力を感じる」

・「ファミリーフレンドリー企業」とは、子育てや介護などの生活と仕事が両立できるような制度を持ち、従業員が多様な働き方を選択できる企業のこと。

・会社を選ぶとき、「ファミリーフレンドリーな企業に魅力を感じる」71.4%。30代女性では84.0%が魅力を感じている。

ファミリーフレンドリー企業増加による妊娠や子育ての課題解決促進に期待

◆山口慎太郎東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授のコメント  

山口氏

 今回の調査結果によると、働きながら子育てをしている男女の子育て参加率は、自己評価で女性は91.4%、男性は51.6%であった。パートナーの評価でも、男性(夫)は女性(妻)を81.9%の参加率と評価しているが、女性(妻)は男性(夫)の参加率を57.2%としている。
 自他ともに、男性の子育て参加率は女性よりまだだいぶ低いということがわかった。
 また、子育てと仕事の両立は、女性は半数が「両立しやすい」としていますが、男性は約4割にとどまっている。女性の半数という結果も、決して高いとは言えないが、それ以上に男性が子育てと仕事を両立することが難しいようだ。
 その証左として、職場の子育て支援制度の整備具合を聞いた設問でも、女性は6割近くが制度が「整っている」と回答しているが、男性は約4割にとどまっている。
 さらに、子育てをする自身に対して上司や同僚が 「協力的」と感じている割合も、男性は女性に比べて低いこともわかった。
 これららの結果から、子育ての比重が女性側に偏ってしまっている実態、さらには、男性が子育てに積極的に関わりたくても、制度面、職場の環境面の両面が障壁になっている様子がうかがえる。
 その中でも、前向きな動きとして、今年4月からは改正育児・介護休業法が段階的に施行され、企業には男性の育児休暇取得に向けての働き掛けが義務付けられ、さらに10月には、産後パパ育休(男性版産休)も創設予定であるため、こうした政府のファミリーフレンドリーな政策介入は急務と言えるだろう。
 2022年6月に発表された女性が生涯に産む子どもの平均数「合計特殊出生率」は1.30で、6年連続で前年を下回り、出生数は過去最少を更新しており、少子化対策は喫緊の課題である。

経済的な問題が妊娠や子育て時期に大きく影響

 今回の事前調査の結果では、20代から40代の男女の半数近くが将来子どもを“授かりたい”と回答しているが、「今すぐ」は2割程度で、今すぐではない理由のトップとして「経済的な問題」が挙げられている。
 2022年4月から、不妊治療に公的医療保険が適用されるようになり、不妊治療のハードルは若干下がると予想される。
 一方で、妊娠に関する知識テストの結果では、たとえば「健康なライフスタイルであれば受胎能力がある」を「正しい」と誤った回答をした人が65.8%いるなど知識不足もある。制度が整うだけでなく、一人ひとりが妊娠に関する正しい知識を身に付けることも重要と感じる。
 また、不妊治療をしたからといって子どもを授かるとは限らず、さらに、子どもを授かっても子育てと仕事の両立は別問題であり、これで少子化が改善されるとは言い難い状況である。
 コロナ禍を機会に在宅勤務ができる環境は急速に整いつつある。我々の研究では、在宅勤務が週1日増えると男性の家事・育児にかける時間が6.2%、家族と過ごす時間が5.6%それぞれ増えたにも関わらず生産性は変わらない、ということが判った。これを機に、男性が家事や育児に積極的に関われる時間が増えることが期待される。
 子育てや介護などの生活と仕事が両立できるような制度を持ち、従業員が多様な働き方を選択できる企業のことを「ファミリーフレンドリー企業」という。今回の調査でもファミリーフレンドリー企業を魅力に感じる人が多いという結果であった。ファミリーフレンドリー企業が増加し、生活者に支持されることを通じて、妊娠や子育てにまつわる課題や理解の促進、そして、さらなる社会全体の支援制度の充実が待たれる。

◆YELLOW SPHERE PROJECT/YSP

 妊娠を希望してもなかなか叶わないという“社会課題”に対し、製品やサービス提供にとどまらず、妊活や不妊治療をする人々を支援し応援するプロジェクトである。目指すところは、より多くの人に適切な情報を伝えて、サポートの輪を広げ、人々の充実した暮らしという未来をつくることへの貢献だ。新しい命を宿す為の努力を、皆が応援する社会へ。それが、YELLOW SPHERE PROJECTの先にある未来である。

https://www.merckgroup.com/jp-ja/yellow-sphere-project.html
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