武田薬品は11日、2022年3月期決算を発表し、クリストフ・ウェバー社長CEOが、「2021年度は力強い業績を達成した。2022年度も成長の勢いは継続が見込まれる」との見解を示した。
2021年度実績は、財務ベースで売上収益3兆5690億円(対前年比11.6%増)、営業利益4608億円(同9.5%減)、当期利益2301億円(同38.8%減)、EPS147円(同38.9%減)、営業活動によるキャッシュ・フロー1兆1231億円(11.1%増)、フリー・キャッシュ・フロー(IFRSに非準拠) 9437億円(同23.8%減)。
成長製品の伸長、新製品の上市ならびに主要なビジネス領域全体での成長が牽引し、力強い業績を達成。実質的な売上収益成長率は対前年度+7.4%と伸長(財務ベース売上収益成長率は対前年度+11.6%)した。
武田薬品として単年度で最多の新規候補物質の承認取得した(日本4件、中国3件、米国2件、欧州1件)。堅調なフリー・キャッシュ・フローは9.437億円(78億米ドル)となり、純有利子負債/調整後EBITDA倍率は2.8倍となった。
2022年度は、売上収益およびCore EPSが引き続き伸長し、Core営業利益は1兆1000億円、当期利益の成長率は+26.9%となる見通しである。
これらの業績に対してウェバー氏は、「当社の成長製品に牽引され、2021年度も力強い業績を報告できたことを嬉しく思う。患者さんへの貢献や、当社の成長の勢いを考えると力づけられる」と明言した。
さらに、「EXKIVITYとLIVTENCITYの承認および上市で示されたように、約40の臨床段階にある革新的なパイプラインの将来性にも期待を抱いている」との考えを示し、「当社の長期的な目標は、サイエンスに基づき、最も信頼されるデジタルバイオ医薬品企業として成長し続けることにある」と断言。
その上で、「私は、戦略の実行により得られた2021年度の力強い業績により、当社が進んでいる道への自信を深めている」と訴えかけた。
チーフ フィナンシャル オフィサーのコスタ・サルウコス氏は、「当社のマネジメントガイダンスに対する2021年度の力強い業績は、2022年度も引き続き売上収益が成長し、キャッシュ・フローを創出するという見通しの揺るぎない根拠となる」と強調。
「これにより、当社は、患者さんや株主の皆様に最大限の価値を提供するための資本配分が可能となる。当社は研究開発、新製品の上市およびその他の成長ドライバーに投資しつつ、負債を迅速に削減し、株主還元を継続する」との見通しを示した。
5主要ビジネス領域の業績概要と主要製品の売上収益は次の通り。
【5主要ビジネス領域の業績概要】
◆消化器系疾患領域:財務ベース売上収益は8757億円。腸管選択的に作用する生物学的製剤であるエンティビオ(国内製品名:「エンタイビオ」)ならびに酸関連疾患治療剤であるタケキャブが牽引し、実質的な成長率は+7%となった。
武田薬品は、エンティビオのバイオシミラーに関する想定を見直し、データ保護期間満了時のバイオシミラーの参入を見込まなくなった。
◆希少疾患領域:財務ベース売上収益は6112億円。競争の激化による希少血液疾患の想定範囲内の減収により、実質的な成長率は△1%となった。
遺伝性血管性浮腫(HAE)の領域では、グローバルで市場を牽引するタクザイロが力強い成長を示し、実質的な成長率は+4%となった。また、2022年3月に日本において承認を取得し、販売地域の拡大も継続した。
2021年12月に米国で上市した移植後の抗ウイルス感染症治療剤LIVTENCITYは、米国の移植センターで高い評価を受けている。さらに、直近の探索的データ解析では、入院率の減少ならびに入院期間の短縮を示した。
◆血漿分画製剤(免疫疾患)領域:財務ベース売上収益は5070億円。実質的な成長率は+14%と大きく伸長した。その要因は、免疫グロブリン製剤ポートフォリオに対する世界的な需要拡大の継続、中国および米国でのFLEXBUMIN(ヒトアルブミン)の需要増加に対し、いずれも供給が改善したことで実現したもの。
2021年度の血漿収集量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けた2020年度と比較して16%増加し、COVID-19の流行拡大以前の水準を3%上回った。
◆オンコロジー(がん)領域:財務ベース売上収益は4687億円。市場浸透の拡大ならびに成長新興国市場、特に中国における力強い需要の増加に牽引され、実質的な成長率は+8%となった。2021年9月に米国で上市した非小細胞肺がん(NSCLC)治療剤であるEXKIVITYは、直近で英国で条件付き承認を取得するなど世界的な拡大が継続した。
◆ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域:財務ベース売上収益は4823億円。バイバンス(国内製品名:ビバンセ)の売上収益は2020年度にCOVID-19の影響を受け、その後の需要増加により、当領域の実質的な成長率は+10%となった。
【主要製品の2021年度売上収益実績】
エンティビオ(消化器系疾患)5218億円、タクザイロ(希少疾患)1032億円、免疫グロブリン製剤(血漿分画製剤)3859億円、アルブミン製剤(血漿分画製剤)900億円、アルンブリグ(オンコロジー)136億円。
2022年度業績予想は、売上収益3兆6900億円(対前年比3.4%増)、営業利益5200億円(同12.8%増)、当期利益2920億円(同26.9%増)、EPS188円(27.9%増)、フリー・キャッシュ・フロー6000 – 7000億円、1株当たり年間配当金180円(前年度と同)。