アストラゼネカは27日、長時間作用型抗体の併用療法である Evusheld(チキサゲビマブとシルガビマブの同梱製剤、AZD7442)について、新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株に対して中和活性を保持することが示されたと発表した。
英国のオックスフォード大学ユニバーシティカレッジおよび米国セントルイスのワシントン大学医学部の双方の実物の“生”ウイルスを用いた新たな中和データより証明されたもの。
同結果はプレプリントサーバーである bioRxiv にオンライン(URL: https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.03.471045v2、
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.15.472828v1)で投稿された。
抗体の中和能力の評価基準である Evusheldの50%阻害濃度(IC50)は、オックスフォード大学とワシントン大学の研究において、それぞれ273ng/mlと147 ng/mlであった。これらの数値は、以前に新型コロナ感染症に感染し自然に回復した人に見られる中和抗体力価3の範囲内であった。
同データは、抗体中和試験の「ゴールドスタンダード」と考えられる 新型コロナウイルスのオミクロン株に感染した個人から分離した実物の生ウイルスを用いた臨床研究により得られたもの。
Evusheldは、オミクロン株および既知のすべての懸念される変異株に対する中和活性を示した米国で使用が認可されている2 つの抗体療法のうちのひとつである。
これらの結果は16日に発表されたFDAの独立した研究者らのシュードウイルスの中和データと一貫しており、Evusheldがこれまでに検討された全ての 新型コロナウイルスの懸念される変異株に対する活性を保持したことを示す一連の非臨床エビデンスを補強するものである。
Evusheldは、ウイルスに対する異なる補完的な活性を有する2つの強力な抗体を組み合わせることで、新たな新型コロナウイルス変異株の出現による潜在的な抵抗を回避するよう設計された。
オミクロン株は、Evusheldの臨床試験実施中には広まっていなかった。アストラゼネカでは、これらのデータから得られた結果の理解をより深めるため、臨床において更なるデータを継続的に収集している。
両研究データは、査読済みの医学雑誌に投稿される予定。
Evusheld は、本年12 月、病状あるいは免疫抑制剤の使用により中等度から重度の免疫不全があり、新型コロナワクチンに対して十分な免疫応答が得られない可能性がある人、あるいは 同ワクチンの接種が推奨されない人に対する曝露前予防を適応として米国で緊急使用許可を取得した。
世界人口の約2%にあたる人々は新型コロナワクチンに対して十分に反応しないリスクの高い集団であると考えられている。最近の新たなエビデンスは、感染リスクの高い集団を 新型コロナ感染から保護することが、変異株出現の重要な要因であるウイルスの進化を阻止できる可能性を示している。
◆Mene Pangalosアストラゼネカのバイオファーマ研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのコメント
第三者による3つの研究からの一貫したデータにより、2つの強力な抗体の併用療法である Evusheld が、引き続き患者さんにベネフィットを提供できるレベルのオミクロン株に対する中和活性を保持することが確信さた。
Evusheldは、新型コロナ感染症の曝露前予防を適応として米国で認可された唯一の抗体療法である。我々はEvusheldがワクチン接種に対し免疫が十分に反応せず COVID-19 の発症リスクが高い免疫不全の患者さんなどの感染リスクの高い集団を保護する一助となることを大変喜ばしく思っている。