世界最小クラスのアミノ糖誘導体から還元反応によって溶けるゼリー状物質を開発 岐阜大学工学部の研究グループ

薬効物質や薬剤放出マトリクスなどへの応用に期待

 岐阜大学工学部化学・生命工学科の池田将教授らの研究グループは27日、アミノ糖に化学反応性の人工分子を導入した世界最小クラスのアミノ糖誘導体から還元反応によって溶けるゼリー状物質を開発したと発表した。
 今回開発されたゼリー状物質は、水を主成分(重さにして99%以上)とするため生体適合性が高いと考えられる。加えて、刺激応答性の特徴を有するため、薬効を示す物質や分子の内包と放出の制御を可能にする薬剤放出マトリクスなどへの応用が期待される。
 池田氏らは、自然界に豊富に存在するアミノ糖(分子モジュール1)に対して、還元反応によって脱離する人工分子(分子モジュール2)を導入したアミノ糖誘導体 (GlcN-NPmoc) をワンステップで合成し、この合成物の性質を調べたところ、超分子ヒドロゲルと呼ばれる水の流動性が低下したゼリー状物質を与えることが判った。
 このゼリー状物質は、アミノ糖誘導体が水中で自発的に自己集合して、直径数10 nm (10–9 m) のナノファイバー (髪の毛の直径の大凡1万分の1)に組み上がることによってできていることを解明した。
 さらに、ゼリー状物質が還元反応によって溶けることを見出した。この性質は、導入した人工分子の化学反応性に起因するもので、分子レベルで予め合理的にモジュール組み合わせ型に設計された性質でもある。
 今回合成したアミノ糖誘導体は、還元刺激に応答するゼリー状物質を形成するゲル化剤分子としては、世界最小クラスの洗練された分子である。
 同研究成果は、化学系プレプリントサーバーの一つであるChemRxiv(本年3月4日)に公開後、アメリカ化学会(ACS)刊行の新たなオープンアクセス(OA)誌JACS Au(ジャックス・ゴールド)に受理され、日本時間22日にweb公開された。
 研究成果のポイントは、次の通り。
○自然界に豊富に存在するアミノ糖(分子モジュール1)に対して、還元反応によって脱離する人工分子(分子モジュール2)を導入したアミノ糖誘導体をワンステップで合成した。

○合成したアミノ糖誘導体が水中で自発的に自己集合して、極細繊維(=ナノファイバー)のネットワーク構造に組み上がり、ゼリー状物質(=超分子ヒドロゲル)を与えることを発見した。さらに、得られたゼリー状物質は還元刺激に応答して溶けることを明らかにした。

○還元刺激に応答して溶けるゼリー状物質を形成するゲル化剤分子としては世界最小クラスであり、分子レベルでモジュール組み合わせ型に設計された洗練された分子といえる。
 水を主成分(重さにして99%以上)とするゼリー状物質は、生体適合性が高いことが期待される。今回開発されたような刺激応答性のゼリー状物質は、薬効を示す物質や分子の内包と放出の制御を可能にする薬剤放出マトリクスなどとしての応用が期待される。

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