武田薬品は18日、PwCコンサルティングの人体モデリング・シミュレーション技術である「Bodylogical」を活用し、武田薬品の臨床試験データを較正したクローン病シミュレーションツールを用いた活動を開始すると発表した。
同活動は、消化器疾患専門医と武田薬品のメディカルサイエンスリエゾン(MSL)の科学的議論のサポートを目的としたもの。
武田薬品とPwCコンサルティングは2019年9月、クローン病を対象としたデジタルツインシミュレーションツールの開発を発表している。PwCが開発したBodylogicalは、人体のさまざまな生理機能を数字で表現し、サイバー空間上に臨床症状や投薬情報を用いてデジタルツインを作成し、個々人に合わせた様々な治療シナリオをシミュレーションする技術だ。
同技術を活用したシミュレーションツールはタブレット上で動くアプリケーション(MSLアプリ)で、消化器疾患専門医と武田薬品のメディカルサイエンスリエゾン(MSL)が科学的議論を実施する際に限定的に使用する。
MSLアプリは、異なる疾患歴・疾患状態を持つ仮想の患者集団の中からひとりの仮想患者を選択し、様々な治療成果をシミュレーションすることでペイシェント・ジャーニーへの理解を深めることを可能にする。シミュレーション結果には、内視鏡CG画像も含まれ、より視覚的に状態を理解できる。
なお、両社は、MSLアプリで用いられているモデルを、学術論文などのデータや武田薬品が有する臨床試験データを用いて較正し、患者データによって精度を検証。さらには、モデルの開発および検証に関する学術論文の掲載に向けて準備を進めている。
これらMSLアプリを用いたMSL活動は、武田薬品のペイシェント・ファースト・プログラムの取り組みの一環である。
武田薬品とPwCコンサルティングは、今後、医師が臨床において使用可能な、デジタルツインシミュレーションモデルを活用した新たなツールの開発に取り組み、患者個人の特性に合った治療シミュレーションの精度を高めていく。
◆Bodylogicalの検証に携わった北里大学北里研究所病院の小林拓特任准教授のコメント
治療の選択肢が拡がりにより、臨床現場では、目の前の患者さんにとってのベストの治療を如何に選択するかが大きな課題となっている。
今回の取り組みは、この課題を解決し、選択肢の増加や治療の進歩を患者さんに本当の意味で還元するための、重要な一歩となる。
◆武田薬品ジャパンメディカルオフィスヘッド、ペイシェント・ファースト・プログラムリードのジュベル・フェルナンデス氏のコメント
常日頃より我々は、「患者ニーズに応える」を念頭に置いており、本プロジェクトを通して実現できることに非常に心を動かされている。
MSLアプリの使用は、専門医とMSLがより活発な科学的議論の実施を目的としたもので、既に非常に前向きな意見を頂いている。我々は、クローン病患者が自身の疾患に対して理解を深めるためのソリューション提供を目指している。