コロナ禍でもSGLT2 阻害薬ジャディアンス等が寄与し堅調に推移 日本ベーリンガーインゲルハイム2020年業績

青野氏

 日本ベーリンガーインゲルハイムは27 日、2020 年(1-12 月)の業績を発表した。売上高は1952 億円(薬価ベース、前年比 3.1%増)となり、コロナ禍でも2 型糖尿病治療薬のジャディアンスファミリー、抗線維化薬のオフェブがいずれも2桁成長を遂げ、前年を上回る堅調な業績を達成した。
 一方、動物薬を販売するベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンの売上高は、232億円(卸売出荷ベース、前年比 6.0%増)。コロナ禍でペット需要が高まる中、コンパニオンアニマル(小動物/ペット)、ライブストック(産業動物)ともに予防に主軸を置いて増収を達成。日本におけるアニマルヘルス市場のリーディングカンパニーの1つとして好調を維持した。
 なお、ベーリンガーインゲルハイムの2020年度のグローバル業績は、売上高2兆3831億円(対前年比5.6%増)、営業利益5626億円、研究開発投資4506億円(同6.8%増)、税引後利益3726億円(同+0.3億ユーロ)であった。
 Web会見した青野吉晃日本ベーリンガーインゲルハイム代表取締役会長兼社長(同アニマルヘルスジャパン代表取締役会長)は、まず、「当社は、株式を公開しないグローバルな研究開発指向の製薬企業として、ユニークな活動に取り組んでいる」と紹介。
 その上で、「これまで主要製品ポートフォリオの刷新、デジタルの積極活用、組織体制の最適化といった“トランスフォーメーション”を継続的に推進し、将来に向けた基盤を構築してきた。これらの基盤により、コロナ禍の不測事態においても、社員と顧客の安全確保と、顧客ニーズへの対応の両立を図るべく、デジタルを活用したコミュニケーションの強化に積極的かつ迅速に取り組めた」と2020年度を振り返った。さらに、「評価の高い製品群を含む強固な基盤に裏打ちされた変化への柔軟な対応により、コロナ禍の不確実な状況にありながらも、前年を上回る力強い成長を遂げることができた」と2020年度業績を評価した。
 国内医療用医薬品事業の成長ドライバーの1つあるSGLT2 阻害薬ジャディアンスの売上高は274億円(対前年比22.7%増)、ジャディアンスとDPP-4阻害薬(トラゼンタ)配合剤トラディアンスは129億円(同100.6%増)。ジャディアンスファミリーとして403億円の売上高(同40.2%増)を示した。
 ジャディアンスについて青野氏は、「昨年11月、慢性心不全に対する日本での効能追加承認申請を行っており、慢性腎臓病のP3相試験も進行中である」と報告した。
 また、もう1つの成長ドライバーである特発性肺線維症(IPF)および全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)治療薬オフェブは、3つ目の適応症として、昨年、進行性線維化を伴う間質性肺疾患の適応症を取得しており、売上高は393億円(同39.3%増)。
 青野氏は、コロナ禍での取り組みにも言及し、「新たなSARS-CoV-2中和抗体であるBI 767551のP1/2a相臨床試験開始」や、「欧州の革新的医薬品イニシアチブ「CARE(Corona Accelerated R&D in Europe)への参画」などを紹介。
 コロナ禍における医療従事者等の支援では、「グローバル支援プログラム」、「日本国内医療機関向けに医療資材を無償配布する施策への協賛」、「マッチングギフトプログラムによる寄付」、「社員に10日間の追加のボランティア休暇を付与」などを挙げた。
 研究開発へのさらなる投資では、「2025年までに、2兆5000億円を投資して、100 以上の前臨床/臨床パイプラインプロジェクトの中から15品目の新たな承認の可能性を見出す」計画を公表。
 特に期待の開発分野として、統合失調症・ 精神疾患に伴う認知障害等を対象とする「GlyT1阻害剤デジタル治療」、肺がん、消化器がん、がん免疫療法、併用療法などを対象とした「KRASへのフォーカス」を紹介した。
 さらに、これら研究開発品を成功裏に導く裏付けとして、「世界中の研究機関や企業とのコラボレーションを拡大」を指摘し、「株式公開しないので、長い期間のコミットができる」と強調した。実際、ベーリンガーインゲルハイムのパイプラインの約50%は、外部パートナーとコラボレーションしたものだ。
 山形工場についても「日本向けの殆どの製品の包装のみならず、製剤にも取り組んでいる」と説明し、「将来的には、アジア、オセアニア地域におけるグローバルな生産ネットワーク拠点の一つとして新固型製剤棟敷地内に建設する」計画を明かした。
 

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