アイテム(本社:東京都)は、8日から米国WHPM社の日本国内代理店として、COVISURE(COVID-19 抗体検査キット)を、医療機関、大学、衛生研究所等の研究用・データ収集用途に限定して販売開始すると発表した。現在、同製品は、FDAに申請中。
COVISURE、新型コロナウイルス肺炎を引き起こすウイルスSARS-CoV-2を、短時間(15分程度)で判別するスクリーニング検査キット。COVID-19被検者の血中または血清に生じる特異的なウイルス抗体、IgG 及びIgM型を検出することで感染の有無が判る。
ヒトはウイルスに感染して数日から1週間ほどの間に、特異的な抗体を産生し増加させる。初期の反応では、免疫グロブリン M(IgM)抗体を産生し、1週間ほどで免疫グロブリン G (IgG) 抗体を産生する。
同検査キットは、コロナウイルスの特異的な IgM と IgG 抗体を同時に検査出来るので、① 感染していない② 最近感染した③過去に感染したが治った(無症状感染者を含む)ーの3つの状態が区別できる優れものだ。❸の場合、欧米では「免疫獲得者」として、職場復帰の目安としている国もある。
PCR方式(Polymerase chain reactionポリメラーゼ連鎖反応)は、 日本で行われている新型コロナウイルスの検査に採用されており、 鼻腔や喉を綿棒でこすって採取した粘液に含まれる、ウイルスなどのDNAを増幅して検出する。PCR 検査は、今この瞬間に体内にウイルスがあるかどうかを調べる方式なので、今この瞬間に他人にうつしやすいかどうかはよく判るが、過去にウイルス感染して免疫があるかまでは分からない。
抗体検査(イムノクロマトグラフィー法)COVID-19 IgM/IgG Rapid Test は、少量の血液があれば検査ができるので、専門の病院に行く必要がなく、医療現場の負担軽減が期待できる。抗体検査方式は、いったん感染すると症状がなくても陽性になるため、過去に罹患したかが分るほか、症状が進行中なのか回復期なのかの推定も可能だ。
その一方で、症状が発生してから数日(3~6 日)経過しないと陽性にならないというデメリットもある。
抗体検査は、あくまでもスクリーニング検査なので、正確な診断の確定は PCR 検査などと併せて行う必要がある。だが、安価・簡単・迅速に判定可能な検査方式の特徴を生かし、大規模かつ広範な検査の展開により、疫学的・統計学的なデータの収集が可能となる。そのため、現在の検査で得られる「感染者数の推移」だけでは明らかにできない、「感染者」「非感染者」「抗体獲得者」の把握など、ウイルス感染の全体像が見えてくることが期待されている。
さらに、緊急事態宣言の発令や解除、経済活動の再開時期の予測、学校の休校や事業者への営業自粛要請など、高度な政治的判断に必要な基礎データとしての活用も可能である。
COVISURE(COVID-19 抗体検査キット)検査キットは、希釈試薬・カセット・ピペットを1セットとし、個人及び一般販売はしていない。
表:PCR 検査と抗体検査の比較 | ||
PCR 検査(ウイルスを検知) | 抗体検査(感染による血液中の抗体を検知) | |
目的 | 今かかっているかを調べることが 中心 | 過去にかかったことがあるか(免疫があるか)を 調べることが中心 |
採取法 | 鼻やのどの奥から専門家が採取 | 採血する。自分でもできる |
結果判明までの時間 | 長い(その場ではわからない) | 短い(その場でわかる) |
精度 | まあまあ良い | PCR 検査よりは悪い |
免疫の有無の判定 | 現時点で感染しているかどうかし かわからない | 既にかかったかどうか(≒感染しにくい、人にう つしにくい)ことがわかる |
検査の従事者の感染の危 険性 | ある | ほとんどない |
【参考】
米国WHPM社ホームページ https://www.whpm.com/products