宇宙飛行中の超小型眼科診断装置開発が順調に進捗 窪田製薬ホールディングス

SS-OST

 窪田製薬ホールディングスは3日、アメリカ航空宇宙局(NASA)およびTranslational Research Institute for Space Health(TRISH)との超小型眼科診断装置Swept Source-OCT (SS-OCT)プロジェクト(フェーズ1)が順調に進捗していると発表した。
 窪田製薬ホールディングス100%子会社のアキュセラ(本社:米国ワシントン州)とNASA、TRISHが参加して開かれたSS-OCTプロジェクト進捗報告会議で明らかにされたもの。アキュセラは、2019 年3月17日、NASAのディープスペースミッションに向けた小型 OCTの開発受託契約を、TRISHとの間で締結している。
同プロジェクトの背景には、長期的な宇宙飛行を経験した宇宙飛行士の多くに、視力障害や失明の恐れがある神経眼症候群(Spaceflight Associated Neuro-ocular Syndrome:SANS)の兆候がみられるとの研究報告を契機とした宇宙飛行中のリアルタイムでの網膜状態計測への需要の高まりがある。
 SANSの症状には、視神経乳頭浮腫、眼球後部平坦化、脈絡膜鄒壁、綿花上白斑、屈折異常がある。近年、NASAでは、長期的に宇宙に滞在した宇宙飛行士の69%がSANSに罹患すると報告している。このSANSの診断・経過観察には、網膜の状態の正確な定量及び定性的計測(網膜厚測定、網膜及び視神経乳頭断層画像)ができるOCT(光干渉断層計:Optical Coherence Tomography)が不可欠となっている。
 とはいえ、現在、国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)で使われている市販のOCTは、SANS の診断や検査には不要な機能が多く搭載されており、操作が複雑であると共に、多忙な宇宙飛行士が二人がかりで撮影する必要がある。加えて、耐放射線性に弱く、大き過ぎるなどの理由で、月や火星などへの長期宇宙飛行時に使用するには適していない。
 今回のSS-OCTプロジェクト進捗報告会議では、NASAとTRISHの15人程度のエンジニア、科学者、医師らにこれまでの成果が提示され、質疑応答や会議の最後には同プロジェクトのフェーズ1の成果であるプロトタイプの操作デモが実施された。今後は、当初の計画通り、2月末日にプロジェクト(フェーズ1)を完了し、2ヶ月以内に開発レポートをNASA・TRISH に提出する。NASA・TRISH の同プロジェクト責任者らのコメントは次の通り。

 ◆William J. Tarver, MD MPH FAsMA, SANS Clinical Lead – CNS NASA Flight Surgeon =「窪田製薬が開発した OCTデバイスは、小型でありながら操作は簡単で、データ処理が早い。このデバイスは、ミッション中に及ぼす宇宙飛行士の眼球への影響の研究に大いに役立つと信じている」
 ◆CAPT Tyson Brunstetter, NASA SANS Clinical Lead – Eyes/Vision=「窪田製薬のSS-OCTデバイスは、商業化された製品のように見た目も洗練され、軽くて持ちやすい、まるで双眼鏡を覗くような使い心地であった。今後のフェーズ2での仕上がりが大変楽しみだ」
 ◆窪田良博窪田製薬代表執行役会長、社長兼最高経営責任者NASA HRP Investigator(研究代表者)=「NASAの担当者に実際に自分の網膜を計測してもらって、測定スピードの速さを評価いただいた。NASAを含めてこれまで一般的に使われいるOCTは、立ち上げから計測終了まで2人の人員と90分の時間を要するが、我々のデバイスは自分1人で数分で計測できる。現在、数ヶ月の宇宙での長期滞在でも3回しか計測できないが、我々のデバイスは毎日でも計測でき、刻一刻と発生するSANSによる乳頭浮腫が観察できる。引き続き、我々の技術力を活かし、このプロジェクトの成功に向けてより一層精進したい」

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