京都薬科大学の国際共同研究グループは16日、ダウン症胎児の脳発達不全にErg遺伝子および脳内環境炎症が関与する可能性を示す新たな知見を報告した。脳内環境炎症は、余剰なERGが脳免疫細胞と炎症性細胞の均衡異常を惹起して亢進する。
ダウン症は、最も頻度の高い染色体異常で、700~1000人に1人の割合で生まれる。通常2本の21番染色体が3本(トリソミー)になることで、精神発達の遅れや記憶学習の障害といった様々な症状を惹起する。
これまで同グループは、ダウン症モデルマウス胎児の大脳皮質で神経細胞数が低下し、脳の発達不全を引き起こすことを報告をしてきたが、神経細胞数低下の原因は不明であった。
今回の研究では、ダウン症モデルマウス胎児の脳に現れる遺伝子群を網羅的に調べ、炎症関連遺伝子の増加を発見した。実際に脳内の炎症性細胞は増加し、免疫細胞が減少する均衡異常が認めらた。
また、トリソミー領域内のErg遺伝子を正常に戻すことで、炎症関連遺伝子群の増加や、脳免疫細胞と炎症性細胞の均衡異常と神経細胞数の低下改善を発見した。
Erg遺伝子は、ヒト21番染色体に存在する遺伝子で、様々な遺伝子の発現調節を行っている。ダウン症の脳発達不全における重要な役割は、今回初めて同定された。
これらの研究は、ダウン症の胎内治療法開発と実現化に大きく貢献するものとして期待が大きい。
なお、京都薬科大学の国際共同研究グループは、石原慶一氏(病態生化学分野講師)、清水涼平氏(大学院生)、秋葉聡氏(教授)、高田和幸氏(同大学統合薬科学系教授)、山川和弘氏(理化学研究所 脳神経科学研究センター 神経遺伝研究チームチームリーダー)らで構成。
これらの研究成果は、7月4日(米国東部時間)に、国際神経病理学会誌「Brain Pathology」にEarly Viewとしてオンライン掲載された。
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