高砂電気工業(名古屋市)は、iPS細胞等の培養に必要な培養液(培地)の定期交換を自動化する簡易システムを、13万円の画期的な超低価格で新発売した。
同システムは、大手企業が販売する全自動式細胞培養装置の一般的な価格(1000~3000万円)の100分の1の低コストで、培養作業の自動化を可能としたもの。
京都大学山中伸弥教授のiPS細胞発明以降、日本の再生医療研究は、大学等多数の研究室での地道な実験等に支えられ、世界の最先端を走り続けている。
実験用の細胞は、通常ウェルやディッシュと呼ばれる小型の容器で培養され、培地で栄養分を供給されるが、この培地は細胞の生育に合わせて定期的に新鮮なものと交換する必要がある。
特に、iPSのような活性の高い細胞は、毎日培地交換を必要とし、高額な全自動培養装置の導入が困難な多くの研究室では、ピペットを用いた手作業での培地交換を実施している。従って、たとえ週末や祝祭日でも、誰かが研究室に出勤して培地交換作業を実施しているのが現状で、多くの研究者や学生の大きな負担となっている。
こうした中、高砂電気工業では、同社の持つマイクロポンプ(100万分の1ℓ単位の液体を扱う超小型ポンプ)技術を応用し、培地交換を自動化する製品「ポータブル培地交換システム」を開発した。
同システムの主な特徴では、①単に超低価格だけでなく、既存の培養容器やインキュベーターをそのまま使用できる、②導入のハードルが低く、乾電池で最大7日間連続駆動可能、③システムごと倒立顕微鏡に載せて観察可能④自動機ならではの再現性の高さーなどが挙げられる。
同システムは、既に使用者から、「培地交換のためだけに、休日に片道2時間かけていたのが不要になった」などの喜びの声が寄せられているほか、計測自動制御学会の技術業績賞も受賞している。
また、装置としてのCEマーキングも行い、海外展開も射程に入れている。