次世代型ヒト乳歯歯髄幹細胞の新規適応症探索で共創プロジェクト開始 FRONTEOとS-Quatre

間葉系幹細胞やES細胞、iPS細胞とは異なる新たな細胞治療として期待

 FRONTEOとS-Quatreは18日、子どもの乳歯から採取できる幹細胞「乳歯歯髄幹細胞(SHED)の新規適応症探索に向けた共創プロジェクト開始を開始したと発表した。
 同プロジェクトは、S-Quatreが開発中の次世代型(機能強化型)SHEDに関して、FRONTEOのAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory」(DDAIF)」を活用した新規適応症探索を試行するもの。
 DDAIFは、AIと創薬に精通したFRONTEOの創薬エキスパートが、KIBITの自然言語処理技術と独自の解析手法を駆使し、標的分子・適応症探索やその裏付けとなる仮説を提供するAI創薬支援サービスだ。疾患関連遺伝子ネットワークの解析や、標的分子候補に関する仮説の構築を通じ、医薬品開発における研究者の意思決定を強力にサポートする。
 また、適応症探索は、医薬品研究開発において、医薬品や医薬品候補物質が治療効果を発揮する疾患を特定するプロセスを指す。
 SHEDは、ヒトの乳歯内部の歯髄組織から採取される幹細胞である。従来、脱落した乳歯は特に活用されることなく破棄または保管されてきたが、近年、SHEDの特徴として①ドナーが子どもであるため、若い細胞であり、増殖能力が極めて高い、②神経や骨の形成や成長に関与するとされるタンパク質の産生能力が高いーが明らかになった。その結果、従来の間葉系幹細胞やES細胞、iPS細胞とは異なる新たな細胞治療の可能性を有するものとして注目されている。

SQ-SHED
脳性麻痺、脊髄損傷、難治性骨損傷、脳腫瘍など複数の病態モデル動物で高い有効性確認

 S-Quatreは、バイオシミラー事業を行うキッズウェル・バイオの100%子会社で、SHEDを基盤とした細胞治療(再生医療)の研究開発を推進している。
 同社が独自の製法により単離・培養したSHED(SQ-SHED)は、増殖能力が極めて高く、各種神経成長・血管新生因子の分泌を高めることに成功している。これまで、脳性麻痺、脊髄損傷、難治性骨損傷、脳腫瘍など、複数の病態モデル動物で高い有効性が確認されている。
 また、同社はこれまでに持田製薬、名古屋大学、九州大学、獨協医科大学、浜松医科大学、英国LYMPHOGENiX社、東京科学大学などと共同で、研究開発および事業化に向けた取り組みを進めている。
 S-QuatreではSQ-SHEDそのものの特性を活かした治療薬開発に加え、遺伝子導入や培養法改良により、機能強化や機能付加した次世代型SHEDの開発も精力的に進めている。今回、この次世代型SHEDに関して、これまで開発を進めてきた疾患に加え、AIを活用してアンバイアスかつ網羅的に適応症を探索することで、新たな最適適応症の発掘を目的にFRONTEOのDDAIFを活用した共創プロジェクト開始を決定した。
 同共創プロジェクトでは、FRONTEOがDDAIFを用いて次世代型SQ-SHEDに適応し得る疾患候補を抽出し、S-Quatreがその有効性を検証する。両社の知見を融合することで、次世代型SQ-SHEDの効率的な適応拡大を図り、アンメット・メディカル・ニーズ解消への貢献を目指す。

◆三谷泰之S-Quatre 代表取締役社長のコメント
 当社で開発中の次世代型SQ-SHEDは、多くの疾患に対する治療薬となり得るポテンシャルを有していると考えている。FRONTEOのAI技術を活用することで、その最適な適応症を迅速かつ精度高く導き出してくれるものと期待している。

◆豊柴博義FRONTEO取締役/CSO のコメント
 FRONTEOは、独自のAIと解析技術により、世界でまだ論文未報告の疾患と標的分子の関係を文献情報から非連続的に発見することを強みとしている。
 SQ-SHEDの特性をAIの自然言語処理で解析することで、これまで想定されていなかった新たな適応症を見出す可能性がある。こうした技術は他の再生医療の他領域にも展開可能であり、本共創プロジェクトが患者さんのQOL向上と医学の進展に寄与することを期待している。

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