
メクテックは15日、筋電位信号と超音波画像を組み合わせた嚥下機能の新評価手法を岩手大学生体工学研究室の佐々木誠教授と共同開発したと発表した。開発したのは、首周辺に貼るだけで微弱な生体電気信号(表面筋電位信号)を検出し、嚥下時の筋肉の動きを非侵襲的にとらえる薄膜センサーシート「嚥下機能評価用伸縮FPC(フレキシブルプリント基板)」。

岩手大学生体工学研究室では、同製品に筋肉の動きを解析する独自技術(特許第7533919号)を実装し、さらに、超音波エコー装置を組み合わせることで、嚥下関連器官と食塊の動きを同時にとらえ、誤嚥・窒息リスクや嚥下機能の低下を評価できる新しい手法を見いだした。
新評価手法は、2025年8月27~29日に開催された「LIFE2025(第24回日本生活支援工学会大会・日本機械学会福祉工学シンポジウム2025・第40回ライフサポート学会大会)」で発表された。 発表者である岩手大学生体工学研究室修士1年の清水咲織氏が「ライフサポート学会バリアフリーシステム開発財団奨励賞ファイナリスト」を受賞するなど、学術的にも高い評価を得ている。
日本では高齢化の進展に伴い、嚥下障害に起因する誤嚥性肺炎が死因の第6位を占め、年間約6万人が亡くなっている。医療機関では、X線透視下で行う嚥下造影検査が精密検査のゴールドスタンダードとして広く用いられるが、検査時の負担も伴うため、対象は既に重症化している人か嚥下障害が強く疑われる人に限られている。
また、装置が大型で持ち運びが困難なため、要介護高齢者の主たる生活の場である自宅や介護施設では、精密検査を実施できない課題がある。2024年6月、厚労省 介護テクノロジー利用の重点分野に食事・栄養管理支援が追加されたように、医療機関以外での嚥下機能の把握や食事の見守り等の重要性は年々増しており、嚥下に焦点を当てた新たな技術開発が求められている。
こうした中、岩手大学生体工学研究室では誤嚥性肺炎の要因であり、生活の質(QOL)に直結する嚥下機能を簡便かつ多面的に評価できる手法の開発に挑戦している。同手法の社会実装にあたり、メクテックの伸縮FPCは、要介護高齢者や高齢障がい者が生活する自宅・介護施設に必要な評価装置を届け、安全・安心な食の場を創生するための欠かせない技術となっている。
メクテックの「伸縮FPC」は、複雑な曲面に自然にフィットする薄さと柔軟性に優れ、生体に安全な粘着剤を使用している。全方位に150%伸長しても通電可能で、簡便かつ快適に装着できる。岩手大学生体工学研究室と共同開発した「嚥下機能評価用伸縮FPC」は、嚥下に重要な筋肉の上に複数のセンサを配置し、その活動を高精度かつ多点で同時取得できるため、詳細な嚥下機能評価に加え、評価時間の短縮と被験者の大幅な負担軽減が期待できる。
さらに、超音波浸透性を有し、「嚥下機能評価用伸縮FPC」と「超音波プローブ」を重ねても超音波動画像の取得を妨げないため、より多くの生体情報に基づく多面的な評価を実現できる。