アルツハイマー病治療薬「ケサンラ」 早期アルツハイマー病長期試験で3年間持続的治療効果の増大確認 リリー

 リリーは、アルツハイマー病治療薬「ケサンラ」について、P3相TRAILBLAZER-ALZ2試験の長期継続投与(LTE)において、3年間にわたり持続的に治療効果が増大する結果が得られたと発表した。
 ケサンラの投与を受けた試験参加者は、Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)に登録された無治療の外部集団と比較して、認知機能低下の抑制が認められ、その効果は3年間にわたり増大し続けた。
 同試験では、ケサンラの投与を後から開始した試験参加者においても、有効性が認められた。だが、ケサンラの投与を先に開始した試験参加者は、後から投与を開始した参加者と比べ、疾患が次の段階に進行するリスクが有意に低いことが示された。これらの結果は、トロントで開催された国際アルツハイマー病学会(AAIC 2025)の速報セッションで発表された。
 TRAILBLAZER-ALZ2のLTE試験は、早期アルツハイマー病の患者を対象にケサンラの有効性と安全性を評価するTRAILBLAZER-ALZ2試験(コア試験)から引き続き実施された二重盲検継続投与試験である。
 コア試験でケサンラの投与を受けた参加者はアミロイドβプラークが除去されていた場合にはプラセボに切り替えられ、一方、コア試験でプラセボの投与を受けた参加者は盲検下でケサンラの投与を開始し、アミロイドβプラークが除去されるまで継続した。
 また、外部比較群として、ADNIの登録例から試験参加者とマッチした無治療例を抽出した集団との比較を行った。TRAILBLAZER-ALZ2 LTE試験の主な結果は、次の通り。

・ケサンラの投与を受けた参加者は、ADNIから抽出した外部比較群と比較して、3年間にわたり治療効果が持続的に増大した。Clinical Dementia Rating-Sum of Boxes[CDR-SB])を用いてコア試験でケサンラの投与を受けた試験参加者とADNI比較群における認知機能の低下を比較したところ、ケサンラ群とADNI比較群のスコア差は18ヵ月の時点で-0.6、36ヵ月の時点では-1.2であり、有意な認知機能の低下の抑制が認められた

・Clinical Dementia Rating-Global Score(CDR-G)を用いてケサンラの投与を先に開始した参加者と、後から投与を開始した参加者について疾患の次の段階に進行するリスクを比較したところ、先に開始した参加者で27%のリスク低下が認められた

・ケサンラの投与を受けた参加者の75%以上が、投与開始後76週間以内にアミロイドβプラークの除去を達成した

・投与を完了した参加者について最長2.5年間にわたり追跡評価を行ったところ、アミロイドβプラークの再蓄積速度は約2.4 CL/年と低い状態で保たれ、これまでの観察結果やモデルと一致していた

・3年間にわたるLTE試験では、新たな安全上の懸念点は認められず、ケサンラの確立された安全性プロファイルがさらに裏付けられた

 アミロイド関連画像異常(ARIA)は、浮腫/滲出液貯留を伴うもの(ARIA-E)と出血/ヘモジデリン沈着を伴うもの(ARIA-H)があり、いずれもアミロイドを標的とする薬剤クラスに共通する副作用で、多くは無症状だが、重篤な症状や生命を脅かす事象となる可能性もある。ARIAは死に至る可能性がある。アポリポ蛋白Eε4(ApoE4)遺伝子を1つないし2つ持つ人は、アルツハイマー病の発症リスクが高く、ARIAの発現リスクも高い状態にある。
 ケサンラは何らかのアレルギー反応を引き起こす場合があり、重篤で生命を脅かす反応が現れる恐れもある。この種のアレルギー反応は、投与中または投与終了後30分以内に現れることが多い。頭痛も報告頻度の高い副作用である。

◆Mark Mintunイーライリリー・アンド・カンパニーの神経科学領域研究開発部門担当バイスプレジデント(医師)のコメント
 TRAILBLAZER-ALZ2のLTE試験は、ケサンラが3年間にわたり持続的な認知機能の低下抑制を示し、その効果が時間とともにさらに増大すること、加えて一貫した安全性プロファイルを有していることを改めて示した。臨床的に意義のある効果は持続しており、早期治療介入の長期的な価値を裏付けている。

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