日本初の経カテーテル的大動脈弁留置術向け脳塞栓保護デバイス発売 ボストン・サイエンティフィック ジャパン

寸法:公称値 販売名:SENTINEL 脳塞栓保護デバイス 医療機器承認番号:30600BZX00150000

 ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社は29日、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)向け脳塞栓保護デバイス「SENTINEL Cerebral Protection System」を21日より日本で初めて発売したと発表した。
 同品は、大動脈弁狭窄症の治療法の一つである経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)の手技中に使用し、脳卒中のリスクとなり得る病変の組織片や術中の血栓等の塞栓物質を捕捉、除去する日本初の脳塞栓保護デバイスで、昨年7月24日に薬事承認を取得し、12月1日に保険収載された。
  大動脈弁狭窄症は、日本国内で60歳以上の約284万人が罹患していると推定されており、高齢化の進行に伴い患者数の増加が見込まれている。病態は、肥大化や硬化が生じ、大動脈弁の開口部が異常に狭くなり、心臓から十分な血液を送り出すことができなくなるため、心臓に負担がかかる。典型的な症状としては、息切れ、胸の痛み、足のむくみ、ドキドキする、体がだるい、疲れやすい、気を失うなどがある。
 治療については、2013年に日本で導入されたTAVIは、開胸手術の代替として、低侵襲性と短い回復期間を特徴とする治療法で、現在では年間1万件を超える手術が行われていると推定されている。だが、TAVI中に剥がれた塞栓物質が脳血管を塞ぐリスクが課題とされており、安全性向上が求められていた。TAVI治療後の脳卒中の発症は、患者のQOLの著しい低下を招く可能性があり、その予防が非常に重要となる。SENTINEL CPSは、こうした脳卒中のリスク低減を目的としたデバイスだ。
 SENTINEL Cerebral Protection Systemは、TAVI手技中に腕頭動脈と左総頸動脈の入口部に一時的に フィルタを留置することで、脳卒中のリスクとなり得る弁尖や石灰化病変の組織片、心筋筋組織、血栓等の塞栓物質を捕捉、除去する。1つのサイズで留置する動脈の多様な解剖に対応している 。
 また、これらの血管は脳への血流の主要経路を担っており、同製品のフィルタにより脳全体への血流の約90%を保護することで、TAVI手技中の塞栓物質による術後の脳卒中リスクを低減できる可能性がある。同品の主な特徴は次の通り。
①簡便性
・右上肢からの直径2mm程度の細い管(6Fシース)による低侵襲なアクセス
・1つのサイズ、3つの操作でフィルタ展開が可能

②操作性
・独立したハンドルコンポーネントによりフィルタごとの操作が可能
・角度調整シースによる多様な左総頸動脈にも容易に到達

③有効性
・ほぼ全ての症例(99%)でいずれかのフィルタにデブリス(弁尖や石灰化病変の組織片、心筋筋組織、血栓塊 等)が捕捉
・手技中の血管アクセスに関連する合併症の発生率は0.4%

◆澤芳樹大阪警察病院院長のコメント
 TAVI治療を受けた患者の99%において、塞栓の原因となると考えられる物質が観察されているものの、これまで本邦には臨床的に使用できる塞栓物質を捕捉するデバイスがなかったため、脳梗塞が発生した際には症状に応じた投薬ならびに経過観察等が実施されるのみで手技の時点で塞栓予防はできないという課題があった。
 これにより、TAVI治療に不安を感じる患者さんやTAVIを患者さんに勧めることをためらう医師もいたかと思われる。だが、SENTINEL CPSが使用できるようになったことで、患者さんと医師の双方の不安が軽減されるとともに、患者さんのより良いQOLへ貢献できると期待している。

◆森川智之ボストン・サイエンティフィック ジャパン代表取締役社長のコメント
 SENTINEL CPSはこれまで海外の69か国で使用されてきたが、今回、保険収載としては世界初となる導入が日本で実現し、より多くの患者さんへの治療提供が可能となった。これまで日本では、TAVI治療時に発生する脳卒中の抑制に対して、塞栓物質を捕捉し脳血管内への侵入を阻止する方法がない状況であったが、今回の製品導入により、多くの患者さんのより良い予後に貢献できることを願っている。

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