塩野義製薬は22日、開発中の新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」について、22日付で厚生労働省より「SARS-CoV-2による感染症」の適応で、緊急承認制度に基づく製造販売承認を取得したと発表した。
また、本年3月に厚生労働省との間で締結した同剤の国内供給に関する基本合意書に基づき、日本政府が100万人分を購入する売買契約を別途締結していることも併せて報告した。
ゾコーバは、3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する1日1回、5日間投与の経口抗ウイルス薬である。P2/3相臨床試験のうちPhase 2b partまでに得られた結果を用いて、本年2月25日付で日本国内における「条件付き承認制度」の適用を希望する製造販売承認申請を行った。
5月27日には、法律の改正により新たに創設された「緊急承認制度」の適用を希望し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による審査が進められ、7月開催の薬事・食品衛生審議会の審議結果を受けて新たに提出したPhase 3 partの速報データ6を基に、11月22日、同審議会で緊急承認に係る審議がなされた。
ゾコーバは、同制度が適用された最初の承認医薬品であり、新型コロナ感染患者に対する新たな治療選択肢となる。第8波による感染拡大、医療逼迫が懸念される中、塩野義製薬はその緊急性を鑑み、速やかに全国の医療機関への供給を開始できるよう、日本政府から受託する流通業務に関して協力機関を含めた緊密な調整を進めてきた。
23日より医薬品卸への出庫を開始し、厚生労働省の事務連絡に基づきゾコーバの処方・調剤が可能な登録医療機関・薬局からの発注を順次受け付ける予定である。
また、緊急承認医薬品として安全性情報の迅速かつ確実な収集と、医療機関に対するタイムリーな提供に取り組む。
今回の緊急承認は、Phase 2b partまでの結果(2a、2b partを合わせた症例数 497例)ならびにPhase 3 partの速報データ(症例数 1,821例)から同剤の臨床における有効性が推定され、安全性が許容可能と確認されたことに基づくもの。
ゾコーバは、オミクロン株流行期に、重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無にかかわらず幅広い軽症/中等症患者を対象に実施した臨床試験において、オミクロン株に特徴的な新型コロナ感染症の5症状に対する改善効果(主要評価項目)および抗ウイルス効果(主要な副次評価項目)の両方が確認された経口抗ウイルス薬となる。
塩野義製薬は、今後、正式承認の取得に向けて対応するとともに、一般流通への移行について厚生労働省との相談を進めていく。また、有効性、安全性に関するエビデンスの集積と並行して、海外での実用化に向けた提携先との緊密な連携、ならびに生産を含むグローバルサプライチェーンの強化を図る。
なお、同件は2023年3月期の連結業績予想に織り込み済みであるため、現時点でその影響は軽微である。今後、状況に応じて精査する。
◆塩野義製薬経営戦略本部/広報部のコメント
ゾコーバは、日本で新設された緊急承認制度の下で承認された初めての医薬品である。感染症の専門メーカーとして、パンデミックから、人々の健康と生活を守ることに貢献できることを誇りに思う。この新しい治療選択肢を、まずは日本の皆さまに、そして本薬を必要とする多くの国々に提供できるよう、引き続き、取り組んでいく。